1997 Fiscal Year Annual Research Report
シマリス初代培養肝細胞を用いた冬眠特異的タンパク質の発現調節機構の解析
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08874121
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
大津 敬 (財)神奈川科学技術アカデミー, 冬眠制御プロジェクト, 研究員 (10270696)
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Keywords | 冬眠 / 冬眠特異的タンパク質 / 初代培養肝細胞 / シマリス / チロキシン / 低温瀑露 |
Research Abstract |
昨年度は、シマリス冬眠特異的タンパク質(HP)の血中量の年周変化の創出には冬眠中のHP発現抑制は継続的な抑制因子の働きかけが必要と考えられること、培養細胞でのHP発現に対して既知の神経伝達物質、ホルモン類、サイトカイン類、計38種のうちチロキシンが特に強いHP発現抑制効果(コントロールの1/4以下)を持つことを報告した。 今年度はチロキシンに注目し、シマリス血漿中のチロキシンおよびその誘導体であるトリヨードサイロニンの濃度をラジオイムノアッセイ法で測定し、同一個体の冬眠期(血中HP濃度が低い)、非冬眠期(血中HP濃度が高い)で変化が見られるかどうかを調べた。測定した5個体すべてで、チロキシンおよびトリヨードサイロニンの濃度は前者で低く、後者で高いという結果を得た。また、チロキシンを約20日間シマリス生体に投与(25μg/100gb.w./day)したところ6個体中4個体で血中HP濃度が減少した。このうち2個体に投与を継続し、7月、8月に低温室(5℃全暗)に移したところ、およそ1ヶ月後に冬眠に入った。これらのことは、一見矛盾するようではあるが、1)生体でのHP調節にはチロキシンのみではなく他のホルモン類の協調作用が必要である、2)肝細胞、HP遺伝子のチロキシンに対する感受性が活動期、冬眠期で変化している、の2点を考慮すれば合理的に説明できる可能性がある。 一方、昨年度に集めた覚醒中、冬眠中のシマリス血漿中からHP発現を調節する因子を検索するために、血漿をゲル濾過クロマトグラフィーによって分画したが、HPがどの分画にも混入してくるため、HPを含まない分画を得るための方法を検討中である。
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