1997 Fiscal Year Annual Research Report
河内地域における路傍祠調査ならびにそのデータベース化に関する研究
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08875112
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
谷口 興紀 大阪産業大学, 工学部, 教授 (00026113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 ひとみ 大阪産業大学, 工学部, 助手 (90257890)
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Keywords | 路傍祠 / 北河内 / 地蔵 / 中河内 / 南河内 / しめ縄 / 環境デザイン / アンチ文明 |
Research Abstract |
今年度は、新たに、地理学的情報システム(GIS)をベースにした調査データの整理・プレゼンテーションシステムの試作的設計を試みている。また、路傍祠の分布が示す実体的意味の考察を進めている。すなわち、外環境的側面として、地理学的(地形的)分布、歴史的分布(古代遺跡分布から現代までの建造物群分布などとの関連)、自然-人為(意志)としての分布(路傍・屋敷内・共有地などとの関連)などの特徴の把握である。内環境的側面として、材料特性(木・石・コンクリートなど)の分布、管理状況の分布、結界特性(塀・垣・基壇・覆い・扉・よだれかけ・化粧など)による分布の特徴の把握である。そして、これらの外環境的側面と内環境的側面との関係などの考察を進めている。このような路傍祠の実体的事柄は、一方では、現在までの文明に支えられているが、地方では、それを表面的現象、仮の姿として眺め直すとき、文明を支え、また貫くものとしての意味が現れる。言い換えれば、「もの」の非存在化の装置という側面である。今までの文明は、「もの」を存在化する方向で発展してきたが、それに対するアンチテ-ゼという方向への回帰である。路傍祠は、信仰的装置であることは明らかであるが、その自明性に留まるのではなく、その根本、すなわち「信仰」とは何か、その文化的意義は、何かということに立ち戻ると、それは、アンチ文明的事柄であるという観点が浮かび上がる。つまり、「もの」として分け隔てて来たことの根本に立ち戻り、本来的に一のものとして捉え直すという観点が浮かび上がる。文明とは、新しい「もの」の生産に支えられるという観点に対し、その差違化を否定する観点の実証的モデルとして路傍祠を意味付けるという観点である。これらの観点は、さまざまな言語的(文化的)意味とそれに対応する実体的要素との関係を問う環境デザイン的観点の基礎の具体的展開となることが期待される。
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