1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08875196
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊池 裕嗣 九州大学, 工学部, 助教授 (50186201)
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Keywords | 孤立高分子鎖 / 引張り特性 / プローブ探針 |
Research Abstract |
孤立高分子鎖の性質は、長年に渡り統計力学的に解析され、高分子溶液のみならず高分子凝集体の諸物性の重要な基礎になっている。しかしながら、それは理論的研究だけにとどまり、孤立高分子鎖を一本だけ取り出し、直接特性評価する実験例は皆無と言える。本研究では、孤立高分子鎖一本の性質を実験的に検証する新規測定技術を開発し、高分子鎖の分子レベルでの特性を初めて直接評価する。 ナノメートルオーダーのマニピュレーションとピコニュートンオーダーの力の測定が可能な原子間力顕微鏡を利用して、高分子希薄溶液中の高分子鎖の引張り特性の測定を検討した。両末端にジメチルクロロシラン基を導入したポリジメチルシラン(PDMS)を調製し、そのトルエン溶液を測定に用いた。また、プローブ探針とシリコンウェハ-基板の表面を水酸化処理した。ジメチルクロロシラン基は水酸基と反応して共有結合を形成することができる。PDMSトルエン溶液中で探針と基板表面の間の距離を0〜100nm程度に渡り繰り返し往復運動させ、探針の変位を検出した。その結果、1〜3%程度の確率で逆ランジュバン関数に類似したフォースカーブと10〜20ピコニュートンの最大引張り力が観測された。これは高分子鎖の一部が探針と基板表面に物理吸着し、引っ張られたものと考えられる。また、0.1%以下の確率で200〜250ピコニュートンの最大引張り力が観測された。これは、PDMS末端の塩素基が水酸基に変化し、探針と基板に水素結合により架橋され引っ張られたものと考えられる。もし、両末端が共有結合により架橋されれば、数ナノニュートンの最大引張り力が検出されるはずである。現在、共有結合による引張りは実現していないが。末端基を変化させるなどして検討中である。 また、市販の原子間力顕微鏡では使用できる溶媒に制限があるため、本申請で購入したピエゾアクチュエータシステムを用いて新規評価装置を試作中である。
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