1996 Fiscal Year Annual Research Report
微生物を捕捉する高分子を用いた農作物の土壌伝染性植物病害の防除
Project/Area Number |
08876010
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
川端 成彬 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (70025998)
|
Keywords | 微生物 / 土壌病害 / ピリジニウム型高分子 / 微生物捕捉剤 / キュウリ / つる割病 / Fusarium oxysporum / 増殖抑制効果 |
Research Abstract |
農作物の土壌病害は農業の現場を悩ませている深刻な問題である。メチルプロミドやクロロピクリンを用いて土壌を殺菌する方法が一般的であるが,メチルプロミドはオゾン層を破壊する性質のために2010年迄に全廃する方針が国際的に決められている。クロロピクリンにも同様な性質があり毒性も非常に強いので、代替法の開発が社会的にも切望されている。本研究では殺菌剤などの薬剤を散布する従来の方法とは全く異なる着想に基づいて,特殊な高分子を用いて病原菌を殺さずに捕捉して病害の発生を抑制するという,類例のない新しい手法の可能性を模索した。この方法によれば微生物を殺さないので,生態系を乱すことなく土壌病害を防除できるのではないかと期待される。当研究室で開発したピリジニウム型高分子は微生物を生きた状態で捕捉する性質を示す。N-ベンジル-4-ビニルピリジニウムクロリドとスチレンとのモル比1:1の共重合体を1.2重量%コーティング処理したセルロース粉末を微生物捕捉剤として用い,キュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum)で汚染された土壌に1g/kg(ピリジニウム型高分子は12mg/kg)混合すると,つる割病の発症が抑制されることが分かった。病原菌濃度が高くなるとつる割病の発症抑制効果は低下する傾向を示したが,病原菌濃度が10^7cfu/gを越える条件でも微生物捕捉剤を土壌に1g/kg混合すると病害の発生は約半分に抑制された。土壌に混合する微生物捕捉剤の量を多くするとつる割病の発症抑制率はさらに高められ,5g/kg土壌に混合した場合は(ピリジニウム型高分子は60mg/kg),病原菌の増殖を抑制する効果も認められ,病害の発生は顕著に抑制されることが分かった。
|
-
[Publications] 川端成彬,伊川友活,鎌田暁義,古澤巌: "ピリジニウム型高分子を用いたキュウリつる割病の発症抑制" Annals of the Phytopathological Society of Japan. 62・6. 636 (1996)