1996 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化から見たタンパク質の折り畳み機構に関する研究
Project/Area Number |
08876027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 史人 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (70212040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 佐貴代 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (70230315)
安本 教傳 京都大学, 食糧科学研究所, 教授 (50026514)
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Keywords | タンパク質 / 分子進化 / 折り畳み / セルピンファミリー / 卵白アルブミン / α1-アンチトリプシン / 熱ショックタンパク質 / BiP |
Research Abstract |
分子進化の観点からタンパク質の折り畳みを解明する本研究においては、今年度は、共通の祖先タンパク質から派生したセルピンファミリーに属するタンパク質の折り畳み機構と熱ショックタンパク質(Hsp)の認識モチーフについて解析し、以下の成果が得られた。 1.ニワトリ卵白アルブミン(OVA)の熱変性状態とそのフォールディングを調べた。今回購入した機器により加熱温度を厳密に制御し、OVAの熱変性過程をCDスペクトルによって追跡したところ、OVAは76℃以上の温度で熱変性し、その状態はポリペプチド鎖が大きく揺らいだアンフォールド状態にあるが、変性剤中において観察されるような典型的なランダムコイル状態ではないことが判明した。80℃において熱変性させたOVAを徐冷すると天然状態に巻き戻ったが、一方、急冷すると、誤って折り畳まれた変性分子を形成し、徐々に天然状態に復元した。このような2相性の復元反応は、同じセルピンファミリーに属するα1-アンチトリプシン(API)の復元反応においても観察されている。 2.急冷によって誤って折り畳まれた変性OVA分子は生理的塩濃度の存在下で線状的に会合し、その会合体の形成にはOVA分子の中心部に位置するβシートAの分子表面への露出が関与することをHspおよびモノクローナル抗体を用いた実験から明らかにした。この分子会合へのβシートAの関与は、血栓症を引き起こすAPIの突然変異体の会合体形成の分子機構と類似していた。 3.OVAの一次配列に従って4残基ずつシフトさせながら12残基のペプチドをマルチピンシステムを用いて化学合成し、Hspの一つであるBiPが結合するペプチドをELISA法により検索した。BiPが結合するペプチドは、疎水性の高い領域に存在し、疎水性と親水性残基が比較的交互に存在するモチーフによって説明できること、APIにおけるBiP結合領域もOVAの領域と概して一致することを見出した。
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