1997 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化から見たタンパク質の折り畳み機構に関する研究
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08876027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 史人 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (70212040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 佐貴代 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (70230315)
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Keywords | タンパク質 / 分子進化 / セルピンファミリー / 卵白アルブミン / 折り畳み / 糖鎖 / GroEL / BiP |
Research Abstract |
分子進化の観点からタンパク質の折り畳みを解明する本研究において、共通の祖先タンパク質から派生したセルピンファミリーに属するタンパク質の折り畳み機構と熱ショックタンパク質(Hsp)の認識モチーフについて解析し、以下の成果が得られた。 1.加熱変性後、急冷によって誤って折り畳まれた卵白アルブミン(OVA)の急冷分子は生理的塩濃度の存在下で数珠玉状に会合し、その会合体の形成にはOVA分子の中央部に位置するβシートAの分子表面への露出が関与することをHspおよびモノクローナル抗体を用いた実験から明らかにしてきた。この分子会合へのβシートAの関与は、OVAと共通の祖先タンパク質から派生したα1-アンチトリプシン(API)の突然変異体の会合体形成の分子機構と類似していた。ところが、OVA(A1分子種)は、四つの糖鎖結合部位をもっているAPIとは異なり、βシートAの近傍に1つの糖鎖をもっている。そこで、OVAの糖鎖が変性分子の会合に与える影響を調べた。天然状態において、糖鎖をグリコペプチターゼFによって切断した分子種(dgA3)の熱変性温度は5℃低下した。急冷分子に硫酸ナトリウムを添加し変性分子の線状会合度を光散乱法を用いて調べたところ、dgA3分子種の急冷分子はA1分子種のそれよりも容易に重合した。大腸菌シャペロニンGroELに対する両者の親和力を比べると、A1分子種の解離定数が930nMであるのに対して、dgA3分子種は120nMであり、糖鎖の有無は変性分子の表面疎水性に大きな差を与えることが判明した。 2.セルピンファミリーに属するタンパク質の一次配列に従ってBiPが結合する配列を推定した。α1-アンチトリプシン(API)、α1-アンチキモトリプシン(ACT)、アンチトロンビン(ATM)、プラスミノーゲン活性化インヒビター(PAI)と卵白アルブミン(OVA)の結合配列の分布を比較した。その結果、タンパク質分子の進化系統樹において近縁の関係にあるものほどBiPが結合する配列の相同性が高いことを見出した。
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[Publications] Nobuaki Shirai: "Linear Polymerization Caused by the Defective Folding of a Non-inhibitory Serpin Ovalbumin" Journal of Biochemistry. 121. 787-797 (1997)
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[Publications] Fumito Tani: "Temperature control for kinetic refolding of heat-denatured ovalbumin" Protein Science. 6. 1491-1502 (1997)