1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08876038
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井田 齊 北里大学, 水産学部, 教授 (90050533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林崎 健一 北里大学, 水産学部, 講師 (80208636)
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Keywords | ホルマリン / DNA / PCR / mtDNA / TNESバッファー / 尿素 / 魚類 / シロザケ |
Research Abstract |
ホルマリン中に長期保存されていた魚類標本からDNAの回収と増幅が可能となれば、過去に蓄積された標本を再利用して遺伝学的検討を行うことができ、水産学のいろいろな分野への応用が可能となる。しかし、ホルマリン固定標本では、保存中にDNAが断片化されており、また、組織の溶解も困難であると考えられる。それゆえ本研究では、断片化されたDNAを効率よく回収することを主眼として、DNA抽出手法の改良を行った。また、本手法を用いて回収されたDNAがどの程度利用可能かをPCR増幅可能長を基準として検討を行った。実験には約20年前までのシロザケ稚魚ホルマリン標本(ホルマリン固定後エタノールに置換したものも含む)の体側筋を用いた。組織の融解に関しては、高濃度の尿素をふくむTNESバッファー中でproteinase Kの連続添加が有効的であった。また、フェノール抽出の際には、遠心後の有機層からの逆抽出を行うことにより断片化したDNAを効率よく回収することができた。回収されたDNAのサイズを電気泳動により比較したところ、ホルマリン固定後数カ月を経過した後は、断片化の程度と保存期間の長短との関連は明確でなく、むしろ固定時の条件に左右されたものと考えられた。PCR増幅に関しては、ホルマリン標本はRAPD法には適さないことが明らかとなった。しかし、mtDNAのcytochrome b領域に関しては、約400塩基対まで増幅が可能であった。さらに、増幅産物をsequencingに供することも可能であったことから、魚類のホルマリン標本を用いてのDNA解析は、一般に困難ではあるが、抽出手法を改良することにより、短い領域を対象とすれば可能であることが明らかとなった。
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