1996 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類フェロモン受容感覚系についての比較細胞学的研究
Project/Area Number |
08877003
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
高見 茂 杏林大学, 保健学部, 講師 (30192628)
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Keywords | 鋤鼻器 / ヒト / ラット / 糖蛋白質 / 免疫組織化学 / 電気泳動 / レクチンブロット / フェロモン |
Research Abstract |
本年度設定した4つの実施計画について、以下の実績を得た。 1 日本人の鼻中隔に鋤鼻器が存在しているかを検索するため、杏林大学医学部耳鼻咽喉科の長谷川 誠教授のご協力を得ておこなった。患者の許可を得て内視鏡で鼻中隔周辺領域を観察、ビデオテープに記録し、鋤鼻器開口部がどのくらいの頻度で認められるかを調べた。その結果、約半数の患者の鼻中隔に鋤鼻器開口部と思われる構造がみられた。さらに例数を増やし、観察を続けたい。 2 ヒト鼻中隔周辺領域を剖検時あるいは手術時に採取し化学固定をおこなう計画であったが、残念ながら一例も組織を得る事ができず、研究協力者の枠を広げる努力を開始した。ほとんど知られていないヒト鋤鼻器研究を国内の臨床、研究家に紹介する為、蛋白質、核酸、酵素に総説「ヒトに鋤鼻感覚系はあるのか?」(vol.41,2093-2100,1996)を執筆した。 3 成体ラット鋤鼻器より糖蛋白質試料を調整し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、分離された蛋白質をニトロセルロース膜に転写し、α-galactoseを終末残基にもつ複合糖質に特異的に結合する植物レクチンGriffonia simplicifolia I-B_4 isolectinとの結合を、レクチンブロット法により調べた。その結果、鋤鼻器には少なくとも10種類の分子量の異なる糖蛋白質がこのレクチンと結合する事がわかった。比較の為、鋤鼻器の中枢を含む脳の部分(嗅球)と嗅球以外の脳の糖蛋白質試料も同様の方法で調べると、嗅球と脳では、分子量230,000(230kD)、46kD、30kDおよび26kDの糖蛋白質は検出されなかった。これらの鋤鼻器に特異的に含まれる糖蛋白について、さらに解析を進めたい。 4 同腹の童貞雄ラット(4週齢前後)を二群に分け、一群は成熟雌と共に飼って雌フェロモンに曝露させ、もう一群は雄のみで飼い続け、約1カ月後、両群のラット脳を潅流固定し、鋤鼻器の一次脳中枢である副嗅球の組織切片を作製した。伸長しつつある樹状突起先端に含まれる蛋白GAP43、幼弱な樹状突起に含まれると考えられているMAP5および樹状突起中に含まれるMAP2に対するモノクローナル抗体を用いて、これらの切片を免疫組織化学染色をおこなった。結果は、GAP43およびMAP2抗体による副嗅球の免疫染色性が、実験群の方が対照群より高くなっている傾向がみられた。この興味深い所見について、さらに解析を進めたい。
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