1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト先天性重症免疫不全症の迅速な遺伝子診断法の開発
Project/Area Number |
08877063
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
杵渕 幸 札幌医科大学, 医学部, 助手 (30244346)
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Keywords | ヒト先天性重症免疫不全症 / 遺伝子診断 / IL2レセプター |
Research Abstract |
ひと先天性重症免疫不全症の迅速な遺伝子診断法の開発を目的として、今回はOmenn症候群を対象とした。本症候群は常染色体劣性の先天性重症免疫不全症で、リンパ系組織の腫大と機能不全(時に母体不全由来のリンパ球によるGVHD様症状を伴う)、好酸球の増加、及び嚥下困難と皮疹を主症状とし、骨髄移植が唯一の治療法である。西洋諸国における発症率はADA欠損症と同程度である。Tak研ではIL2レセプターβ鎖遺伝子欠損マウス(H.Suzuki Science 268:1472,1995)を開発し、この症状がOmenn症候群と類似していると考えられた。同研究室で集めたOmenn症候群(フランス、イタリア、カナダ)患者末梢血DNAを用いた。はじめにIL2レセプターβ鎖遺伝子のエクソンを両端のスプライシングドナーとアクセプターを含めて有効なPCR増幅が行えるプライマーと実験条件を10個のエクソンそれぞれに関して決定した。次にこの実験条件を用いて上記患者末梢血DNAをサンプルとしてPCR法を行い、得られた産物に関して塩基配列を決定した。3症例においてエクソン10に塩基配列の置換が認められた。ただし、塩基配列の置換が認められた部位そのものは3例それぞれ異なっていた。これらの変異部位に特異的なプライマーを作成し、再度PCR法を行ったところ、対応する症例のみPCR産物が検出される条件を決定した。健常人より得た完全長IL2レセプターβ鎖cDNAをエクソン10のみOmenn患者由来の変異遺伝子と組み替え、これをバキュロウイルス発現系を用いて蛋白合成を行った。現在、種々の刺激伝達分子との結合性について検討する過程にあり、この結果、この遺伝子変化と疾患発症の関係が明らかになることが予想される。
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