1996 Fiscal Year Annual Research Report
新規合成レチノイド(Am80, Ch55, Re80)によるヒト神経芽腫の細胞分化
Project/Area Number |
08877124
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
糸数 直哉 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (90244194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 徹 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (90117888)
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Keywords | 神経芽腫 / レチノイン酸 / 合成レチノイド / 細胞分化 / アポトーシス |
Research Abstract |
神経芽腫(Neuro blastoma:以下NBと略)は神経冠より発生する腫瘍で、以下の臨床的特徴をもつ。(1)小児期固形悪性腫瘍の中で最も頻度が高い。(2)臨床経過中に分化・成熟がおこることがある。(3)in vitroでは種々の化学物質や生物学的活性物質により分化誘導が可能である。(4)1歳以下の進行NB(病期IVS)の予後は、1歳以上の進行NB(病期IV)と異なり、良い。これらNBの臨床的特徴は、NB細胞の分化・成熟とアポトーシスに関係していると考えられる。 一方、我々は既にNBの神経細胞への分化誘導を、種々の分化誘導剤を用いて検討してきた。そして合成retinoidであるE5166は、in vitroでのNBの神経細胞への分化誘導能が最も強いことを報告してきた。さらに最近になってAm80、Ch55とRe80などの合成retinoidが首藤氏により開発された。そこで今回これら3種のretinoidによるNBの分化誘導能を検討した。 NB細胞株KP-N-RTに上記のretinoidを添加し10日間培養し、分化したNB細胞(細胞突起が細胞の直径の2倍以上と定義)の出現を観察した。50%以上の分化細胞を誘導出来るretinoidの濃度は、Ch55とRe80(1.0X10^<-11>M)とAm80(1.0X10^<10>M)、E5166(1.7X10^<-5>M)であった。すなわちCh55、Re80とAm80は、我々が従来用いてきたE5166よりもさらに10^<-5>〜10^<-6>の低濃度でNBを分化誘導することが明らかとなった。またretinoid添加により形成された細胞突起は、neurofilament陽性であることが蛍光抗体法で証明された。すなわち形態学的のみならず細胞骨格蛋白の点でも分化した神経細胞に誘導されたことが分かった。 今後これら3種のretinoidによるNBの分化誘導能の機構について、(1)retinoic acid受容体(retinoic acid receptorとretinoid X receptor)と(2)アポトーシスとの点よりさらに検討し、NBの細胞生物学的特徴を明らかにしたい。
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Research Products
(1 results)