1996 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βによるヒト造血細胞株の文化誘導と細胞周期調節に関する研究
Project/Area Number |
08877165
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
目黒 邦昭 東北大学, 医学部・付属病院, 助手 (30270838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀岡 淳一 東北大学, 医学部・, 助手 (30261621)
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Keywords | 赤芽球分化 / TGF-β / CDK inhibitor |
Research Abstract |
本研究の目的は造血細胞株に対するTGF-βの多彩な作用を理解し、それにより得られた知識を造血幹細胞の細胞周期調節に生かし、ひいては造血幹細胞の臨床応用を行うための基礎知識を提供することである。方法;本年度はまず始めに、各遺伝子プローブの作成を行った。Erythroid-specific δ -aminolevulinate synthase(ALAS-E), α and β-globin, p53, cyclin dependent kinase inhibitor(CDKI)p15, p16, p21, p27, bcl-2, bcl-XLおよびβ-actinの各cDNA断片の増幅のためのPCR primerを合成した。ヒトの赤芽球系細胞株YN-1、ヒト骨髄細胞よりmRNAを抽出し、RT-PCR法によりcDNAを増幅しprobeとした。YN-1、Y1-KおよびK562細胞はTGF-β存在下で培養するとALAS-E, globin遺伝子発現は増加し、これら遺伝子の発現はTGF-β濃度依存性であった。YN-1細胞増殖は1ng/ml TGF-β濃度下で増殖は抑制され、5ng/mlではより高度に抑制された。CDKIのp21, p27mRNAはYN-1細胞の定常増殖状態で発現が見られ、TGF-β分化誘導後の変化は見られなかった。bcl-XLは、TGF-β処理前に発現を認め、TGF-β処理後72時間まで変化を認めなかった。Western blot法によりTGF-β処理後のp27蛋白発現の検討したが明らかな変化は認めなかった。考察; TGF-βは造血幹細胞抑制因子として知られ、また、造血幹細胞はTGF-βをautocrine分泌し自己をG1期に停止させているとの仮説が提唱された。TGF-βはCDKIのp.15やp27を誘導し細胞周期停止をもたらすと報告された。さらに骨髄系細胞株で分化誘導後、p27はp21発現が増加し細胞周期停止に関わるとともに直接分化誘導をもたらすと報告された。赤芽球系細胞株のTGF-βによる分化誘導においてもp27が関与している可能性が考えられたが、本研究ではp27mRNAおよび蛋白発現に変化は見られず、その関与は明らかにできなかった。CDKIの関与については特異的なCDKと結合するCDKI量の変化およびCyclin/CDK complexのkinase activityの変化をさらに検討する必要がある。また、p21およびp27遺伝子の強制発現あるいはアンチセンス法などによる発現抑制の影響を検討することも有用と考えられる。p21、p27などのCDKIは細胞周期制御のみならずG0期での停止や老化にも関与するとされ、その作用は多岐にわたっており赤芽球系細胞分化へ関与している可能性も十分あり検討をさらに進めたい。
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