1997 Fiscal Year Annual Research Report
V-H-ras抑制変異体N116Yを用いた膵癌遺伝子治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
08877182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 利幸 北海道大学, 医学部, 講師 (40261284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 紘之 北海道大学, 医学部, 教授 (80002369)
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Keywords | N116Y / pancreatic cancer / K-ras / gene-therapy / transformation / CEA / adenovirus vector |
Research Abstract |
昨年までの研究において,独自に樹立した10種のヒト膵癌培養細胞株PCI-6、10、19、24、35、43、55、64、66、68の全てにおいてK-rasコドン12、13の変異が認められることを確認した。さらに、これらras変異をもつ膵癌細胞に対してポフェクション法を用いてN116Yを実験的に遺伝子導入し、N116Yが膵癌細胞増殖抑制効果を示すことをin vitroにおいて証明し、各種学会、および学術誌において発表してきた。その後、本研究の実用化を目標として、癌細胞へのN116Y遺伝子導入効率の向上、副作用の軽減のためにアデノウイルスペクターを用いて研究を行った。すなわち、N116YとCMV(サイトメガロウイルス)プロモーターを上流に組み込んだアデノウイルスペクター(Ad CMV N116Y)を作成し、その遺伝子導入効率と膵癌細胞増殖抑制効果を検討した。その結果、膵癌細胞ではアデノウイルスペクターを用いてmoi200で65-90%の導入効率が得られ、またmoi200あるいは400においてコントロールに比して全ての膵癌細胞におけるin vitroでの増殖抑制効果が得られた。さらに、癌特異的な治療効果を高めるため、CEAプロモーターによる腫瘍特異的遺伝子発現システムを開発した。すなわちCEAプロモーターとN116Yを上流に組み込んだアデノウイルスペクター(Ad CEA N116Y)を作成し、これを用いてin vitroにおける各種膵癌細胞増殖抑制効果を検討したところ、CEA非産生の膵癌細胞株PCI-19、24に対してはAd CEA N116Yはmoi400でも増殖抑制を示さなかったのに対し、CEA産生膵癌細胞PCI-35、43、66の各株においてmoi200においてコントロールに比べ、有意の細胞増殖抑制効果を現した。以上よりアデノウイルスペクターとCEAプロモーターの利用によってN116YのCEA産生膵癌細胞に対する高い腫瘍特異的遺伝子治療効果が実証された。
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