1996 Fiscal Year Annual Research Report
消化器癌に対する同胞リンパ球を用いた抗原特異的養子免疫療法の臨床的研究
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08877204
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
上田 祐二 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (60254356)
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Keywords | 養子免疫療法 / 食道癌 / 細胞傷害性Tリンパ球(CTL) / GVHD |
Research Abstract |
平成8年度に、当施設にて腫瘍細胞株の樹立が可能であった食道癌症例がなかったため、HLA一致同胞リンパ球とHLA-Alocusの一致したアロ食道癌細胞株を利用した養子免疫療法(AIT)を、一例の進行食道癌症例に対し施行した。患者は70歳、男性(血型O型、HLA:A-2,-24,B-7,-17Cw-3,-7)、胸部食道癌症例であったが、腹腔内リンパ節転移が著しく、その肝臓、肝動脈への浸潤を認めたため、手術を断念し、放射線、化学療法を施行した。しかし、リンパ節転移巣に対する効果が乏しくAITを行うこととした。放射線、化学療法の影響により患者末梢血リンパ球(PBL)から有効なエフェクター細胞を誘導することが不可能であった。よって、患者の4人きの同胞のうち唯一妹のみが患者とHLAが一致したため血型は不一致(B型)であったが、充分なin formed consentの後、妹のPBLを移入細胞源として用いた。 患者、妹とHIA-A24を共有するアロ食道癌細胞株をStimulatorとして、妹のPBLからリンパ球腫瘍細胞混合培養にて低濃度のIL-2存在下にキラー細胞を誘導し、患者にIL-2とともに全身移入した。誘導されたキラー細胞は30日間以上の長期培養後に、Stimulatorとして用いた腫瘍細胞に特異的な傷害活性を示すようになり、HLA-A24に拘束性の食道癌拒絶抗原の存在が示唆された。AITを3ク-ル施行後、患者のリンパ節転移巣は著明に縮小し(PR)、手術可能となった。Graft-versus-host-disease(GUHD)関連の副作用はいっさい認めなかった。以上によりHLA一致、血型不一致同胞リンパ球を用いたAITの安全性が示唆された。 腫瘍細胞株が樹立され、なおかつHLA一致同胞の存在する症例が極めて少ないため、今年度から対象を膵癌、大腸癌等の腺癌にも広げ、安全性、治療効果、抗腫瘍効果発現機序を検討していく予定である。
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