1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト前立腺組織中EMBPをモデルとした再燃前立腺癌発生機序に関する検討
Project/Area Number |
08877247
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
椎名 浩昭 島根医科大学, 医学部, 助教授 (70187318)
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Keywords | EMBP / 前立腺癌 / アポトーシス |
Research Abstract |
Estramustine結合蛋白(EMBP)は前立腺癌(PC)治療薬の一つであるestramustineに特異的に結合する蛋白である。ラット腹葉におけるEMBPはアンドロゲン依存性分泌性蛋白であることが知られているが、ヒト前立腺組織におけるEMBPに関しては不明の部分が多い。今回我々はPC組織におけるEMBPの免疫組織学的発現をandrogen receptor(AR)、proliferating cell nuclear antigen(PCNA)、およびBcl-2遺伝子産物の免疫組織学的所見と比較し、また臨床病理学的所見と比較することでEMBPのPC組織における臨床的意義を検討した。 未治療PC組織におけるEMBP,PCNA,Bcl-2はPCの脱分化および臨床病期の進行に伴い増加し、ARは逆に減少した。EMBPはPCNAおよびBcl-2と正の相関を示し、ARと負の相関を示した。再燃PC組織におけるEMBP,PCNAおよびBcl-2は未治療PC組織と比較し有意に増加したが、ARは有意に減少した。初回治療後3年未満に再燃した症例と3年以降に再燃した症例を比較すると、前者におけるEMBP,PCNAおよびBcl-2陽性率は有意に増加し、ARに関しては逆に減少していたが、2群間で有意差を認めなかった。さらに、EMBP/AR>1.5を有する症例における非再発率は1.5以下の症例に比較し有意に低下していた。 前立腺癌組織におけるEMBPは癌組織の脱分化に伴いそのアンドロゲン依存性を消失し、EMBPは癌組織の増殖能ならびにアポトーシスと関連して変動する蛋白である可能性が示唆された。また、癌組織におけるEMBP陽性細胞とAR陽性細胞との比率は前立腺癌のもつ生物学的悪性度を知る上で有用な指標と考えられた。
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