1996 Fiscal Year Annual Research Report
レチノイン酸によるヒト口腔癌細胞株の増殖、分化の遺伝子転写制御機構
Project/Area Number |
08877278
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
客本 斉子 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90118274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 孝幸 岩手医科大学, 歯学部, 助教授 (90164665)
|
Keywords | レチノイン酸レセプター / レチノイドXレセプター / RAR / RXR / COUP-TF / 転写因子 / 口腔癌 |
Research Abstract |
私共は、HSG細胞におけるレチノイン酸(RA)による増殖や分化の分子機構をレチノイン酸レセプター(RAR)による転写制御を中心に検討してきた。最近、私共はRARの転写制御におけるヘテロダイマーパートナーであるRXRをHSG細胞よりクローニングしたが、この際、RXRファミリーに属しRA作用の負の制御に関与すると考えられているCOUP-TFIもクローニングされた。そこで本年は、RAによるRARを介した転写調節系へのRXRならびにCOUP-TFIの関与を調べるため、以下の実験を行った。 (1)COUP-TFI抗体の作成 抗体作成のための抗原タンパクを得るため、大腸菌におけるCOUP-TFIの発現実験を試みた。まず、COUP-TFIのcDNAを大腸菌発現ベクターに組み込み、これを用いて大腸菌TG1細胞をトランスフォームさせ組換体を作成した。この大腸菌における組換体COUP-TFIタンパクが安定して発現しているかについては現在検討を行っている。一方、COUP-TFIのN末端側のunique配列を利用したペプチド抗体は現在作成中である。 (2)ゲルシフト法によるDNA結合能の解析 これまでに、RARはRXRとヘテロダイマーを形成することによりレチノイン酸応答配列(Retinoic Acid Responce Element,RARE)と結合することが明らかとなっているので、本実験においては、RARとRAREとの結合に対するCOUP-TFIの存在の影響をゲルシフト法により調べた。COUP-TFIはホモダイマーとしてRAREと濃度依存的に結合した。In vitro発現RAR-RXRヘテロダイマーあるいはHSC核抽出物(0.4MKCl)とRAREとの結合の際にin-vitro発現COUP-TFIが共存すると、RAREとの結合バンドの強度は有意に減少し、COUP-TFIとRAREとの結合バンドとみられる第二のバンドが出現した。これらの結果より、COUP-TFIはRAR-RXRヘテロダイマーとRAREとの結合を抑制することによりRAによる転写活性化を制御する働きを担っていることが推測された。
|
-
[Publications] Sato,N.: "Proliferative signal transduction by epidermal growth factor (EGF) in the human salivary gland adenocarcinoma (HSG) cell line." Biochem.Mol.Biol.Int.38・3. 597-606 (1996)
-
[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺腺癌細胞株(HSG)におけるレチノイン酸レセプターによる転写活性化" 口腔組織培養研究会誌. 5・1. 37-48 11-112 (1996)
-
[Publications] 太田稔: "ヒト顎下腺由来腺癌細胞株における増殖と分化(総説)" Human Cell. 9・1. 79-88 (1996)
-
[Publications] Hatakeyama,S.: "Retinoic acid enhances expression of bone morphogenetic protein-2 in human adenocarcinoma cell line (HSG-S8)." Biochem.Mol.Biol.Int.38・6. 1235-1243 (1996)
-
[Publications] Nemoto,T.: "Dimerization characteristics of the 94-kDa glucose-regulated protein." J.Biochem.120. 249-256 (1996)
-
[Publications] 客本斉子: "ヒト顎下腺腺癌細胞株(HSG)における転写因子COUP-TFの発現" 口腔組織培養研究会誌. 6・1(in press). (1997)