1996 Fiscal Year Annual Research Report
受容体型チロシンホスファターゼLARのインスリンレセプターチロシンキナーゼ制御
Project/Area Number |
08877328
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻川 和丈 大阪大学, 薬学部, 助手 (10207376)
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Keywords | 受容体型チロシンホスファターゼ / インスリン / インスリンレセプター / LAR / チロシンキナーゼ / チロシン脱燐酸化 |
Research Abstract |
わが国での糖尿病の大多数を占めるインスリン非依存性糖尿病の発症原因を明らかにするためには、インスリンのシグナル伝達制御機構を解明する必要がある。このシグナル伝達にインスリンレセプターのチロシン燐酸化が重要な役割を演じていることが明らかにされている。しかしこの逆反応であるチロシン脱燐酸化に関しては明らかにされていなかった。本研究では、血球系以外の体細胞に広く発現している受容体型のプロテインチロシンホスファターゼであるLARが、インスリンレセプターの燐酸化チロシンを脱燐酸化することによってインスリンのシグナル伝達を制御していると考え解析を行った。その結果、次のようなことを明らかにすることが出来た。 シンスリンとLARは定常状態で会合して存在している。インスリンがそのレセプターに結合するとβ鎖を速やかに自己チロシン燐酸化し、チロシンキナーゼ活性を上昇させる。この活性によりLARの細胞内ドメインであるP-subunitのチロシン燐酸化が行なわれる。一方、LARはチロシン燐酸化されたインスリンレセプターβ鎖を脱燐酸化することによりインスリンのシグナル伝達を解除する。さらにチロシン燐酸化されているLARのP-subunitをも自己チロシン脱燐酸化する。このインスリンレセプターの脱燐酸化は、LARのホスファターゼドメイン1により、またインスリンレセプターとの会合にはホスファターゼドメイン2が機能としていることが明かとなった。 現在、LARのチロシン燐酸化部位の同定、ならびにチロシン燐酸化によるホスファターゼ活性の変化について検討中である。この研究はインスリン非依存性糖尿病の発症原因の解明への手掛かりを与えるものである。
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