1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08878019
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉成 直樹 高知大学, 人文学部, 教授 (80158485)
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Keywords | カシュウイモ / 熱帯系ヤマノイモ類 / 熱帯系根栽農耕文化 |
Research Abstract |
1.四国を中心に、全国の栽培、利用状況を概観すると、栽培型のカシュウイモはブナ林帯に分布し、野生型のニガカシュウは照葉樹林帯に分布する傾向にあり、両者の間に棲み分けがみられる。四国の場合、ブナ林帯では栽培型のカシュウイモが利用されているにもかかわらず、照葉樹林帯では近年に至るまで栽培型のカシュウイモの利用はみられず、水さらしの技法で野生型のニガカシュウが利用されていた。 2.1から、はじめに野生型のニガカシュウが照葉樹林帯に導入され(一部はブナ林帯にも浸透)、利用されており、その後、新たにブナ林帯に栽培型のカシュウイモの利用が展開したが、照葉樹林には浸透することはなかったものと考えられる。このことは、日本に限ってみれば、栽培型のカシュウイモはブナ林帯に適応した品種であると言える。 3.日本のブナ林帯で栽培型のカシュウイモが残存したのは、里芋の古い品種が基本的に照葉樹林帯に適した品種でありブナ林帯まで浸透できなかったこと、また栽培型のカシュウイモの利用が急激に廃れてしまったのは、品種改良の進んだサツマイモがカシュウイモ栽培地域にも浸透したためと考えられる。 4.名称と儀礼を手がかりに、熱帯系ヤマノイモ類だけではなくサトイモ類をも視野に入れて、熱帯系根栽農耕文化の流れを琉球列島で追ってみると、南方島嶼から北上した熱帯系サトイモ類は、「ムジ」という名称を持ち、本来、地下茎を利用するものではなく、葉柄利用を主眼とするものであった。他方、本土地域から南下した温帯系のサトイモ類は地下茎の利用を主眼とするものてあり、熱帯系根栽農耕文化の流れと交流した結果、同じく地下茎を利用する熱帯系のヤマノイモ類の名称である「ウム」の名称を持つに至ったと考えられる。
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Research Products
(1 results)