1997 Fiscal Year Annual Research Report
教科・教材に対する認識活動における事象関連電位の解析
Project/Area Number |
08878031
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
吉田 淳 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90115668)
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Keywords | 教科教育学 / 教材の特徴 / 認識活動 / 心理生理的活動 / 事象関連電位(ERP) / 意味受容 / 情報処理 |
Research Abstract |
事象関連電位(Event-Related Potentials:ERP)は、ある特定の情報や刺激に対する生体反応として、脳波の中でも精神的な活動を捉えるときに有効である。ERP反応は脳の活動全体の指標ではなく、むしろ特定刺激に対する反応を捉えることができる。本研究では、このERP反応を測定することにより、教材に対する認識活動の特徴を、情報入力段階で検討することを目的としている。 今回の萌芽的研究では補助金を得ることにより、(1)シールドルームによるノイズの除去、(2)脳波から必要な反応のみを選択しERP反応を純粋に取り出すこと。(3)提示用画像の時間的制御 の3点の問題を解決することができた。この改善により、正確なERP反応を安定的に得ることができるようになった。 本研究では、2つの情報を連続提示したときの関係づけ・意味づけ課題が、ERP反応に及ぼす影響を実験した。提示した情報は視覚情報で、文字単語(清音2音節、清音3音節)、数字(2桁の和算、減算)、実物画像(動物、道具)の3群で、2情報セットで60種類をコンピュータ制御により提示した。提示時間は、1提示400ms、間隔1600msであり、各実験の被験者は大学生16名とした。その結果、ERP反応に次の特徴が明らかになった。 (1)N200以前の反応(受容反応)では大きな差異はないが、P300以降の反応(処理反応)は、情報の持つ意味が高い(明確な)ほど、単語≧数字>画像の順で早く、強く出現する傾向がある。 (2)連続した2つの情報では、1つ目の情報の受容・処理よりも2つ目の情報の方が反応潜時が早い。 (3)教示した課題が、明確になるほどERP反応は明確になり、曖昧な課題になると出現しにくい。 (4)複雑な情報になると、ERP反応のピーク強度が小さく同定が困難になる。 この研究から、課題の明瞭性、教材の複雑さや有意味性などの指標としてERP反応が有効であることを明らかにすることができた。
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[Publications] 吉田 淳: "自然認識における事象関連電位(1)" 日本科学教育学会年会論文集. 20. 195-196 (1996)
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[Publications] 吉田 淳: "教科・教材に対する認識活動における事象関連電位の解析(I)" 日本教科教育学会全国大会論文集. 22. 37-38 (1996)
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[Publications] 吉田 淳: "理科授業における自己評価及び相互評価の方法" 理科の教育. 46・10. 16-19 (1997)
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[Publications] 吉田 淳: "学習意欲を高める指導のあり方-理科学習を中心として-" 理科教育研究. 7. 7-12 (1997)