1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08878059
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 俊一 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 教授 (70001659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 薫 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 助教授 (50114997)
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Keywords | 雪泥 / スラッシュ / 雪泥流 / スラッシュ雪崩 / 雪代(ユキシロ) / 衝撃力 / 非ニュートン流体 / 凝集構造 |
Research Abstract |
雪泥流(slushflow)というのは、積雪が氷で飽和してどろどろの状態になって流れる状態をいい、最近の暖冬少雪年でも北海道・東北・北陸の渓流内で発生して死亡事故を伴い社会的問題となっている。しかし渓流内で一瞬のうちに発生して痕跡をあまり残さないためにその実態は不明である。研究は、主として雪泥の性質を調べるために低温環境実験室で模型斜面を用いて行われた。そして野外調査も実施して雪泥流の事例に遭遇することができた。実験的研究から得られた成果は概略次のようである。(1)雪泥の形状の時間的変化をビデオマイクロスコープによって調べた結果、0℃の水に浸っている雪粒は時間と共に大粒子が小粒子を食って粗大化し、形状は次第に球に近ずく。この結果雪粒同士の結合力は弱くなり雪泥は流動しやすくなる。(2)雪泥流と水流の衝撃力の比較実験から、雪泥流には多くのスパイク状の水流よりはるかに大きい衝撃力を示すことが明かになった。通常は雪泥流の方が密度と速度が水流よりも小さいことから、衝撃力は水流より小さいことが推測されたが結果は逆であった。このことは雪泥流は凝集構造を持つ非ニュートン流体であることで説明できる。(3)雪泥流の最大衝撃力は雪と水の質量比(S/W)が0.3〜0.4で最大となる。これより大きな値の雪泥流は、斜面角度が10度では流動せずに水だけが抜けて流れ、雪泥は斜面上に置き去りにされる。(4)雪泥流の予知方法の基礎的実験として、震動レベル計を実験斜面上に設置して、流動方向の加速度を調べた結果、水流よりも大きな加速度と変動を示した。このことから雪泥流の震動特性を明かにして実用的な予知方法の可能性が示された。また、1997年2月26日新潟県南魚沼地方の3河川で雪泥流が発生した。現地調査から小さな河川から早く発生することがわかった。例えば、聞き取り調査により、近尾川(未明)、鎌倉沢川(5:40)、水無川(9:00)の順であった。流域が大きいほど雨と融雪水の出水時間が遅れることによる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 小林俊一: "温暖化と「雪泥流」災害" 予防時報. 184. 8-9 (1996)
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[Publications] 小林俊一: "雪泥流災害を考える" 新潟大学公開講座講義概要. 9-10 (1996)
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[Publications] 小林俊一: "雪崩の発生機構と運動" 第44回レオロジー討論会講演要旨集. 185-190 (1996)
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[Publications] 小林俊一: "雪泥流災害の実態" 第15回日本自然災害学会学術講演会講演概要集. 11-12 (1996)
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[Publications] 小林俊一: "雪害の発生機構とその防止対策" 新潟大学地域共同研究センターセミナー・講演会資料集. 139-181 (1997)