1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞に特異的な細胞毒素intermedilysinによる細胞死のメカニズム-類人猿から人類への進化は細胞にどのような変化をもたらしたか?-
Project/Area Number |
08878100
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長宗 秀明 徳島大学, 工学部, 助教授 (40189163)
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Keywords | 細菌毒素 / ヒト特異的 / 細胞溶解毒素 / 連鎖球菌 |
Research Abstract |
報告者らはStreptococcus intermediusがヒト細胞に特異的な細胞溶解毒素intermedilysin(ILY)を分泌することを見いだし、本年、その特徴的なヒト特異性を毒素側及び宿主(ヒト)細胞側から解明するために、ILYの構造とその作用機序について、以下のような解析を行った。 1 ILYの構造解析 ・既知の内部アミノ酸配列を基に混合プライマーを調製し、UNS46株のゲノムDNAをテンプレートにILY遺伝子の局所部分を増幅・クローニングし、これを基にさらに上流・下流にカセットPCR法でクロモソームウォーキングを行って1520bpのILY部分遺伝子構造を判明した。 ・ILYの構造はチオール活性化毒素(TAC)のpneumolysinに最も相同性が高いこと、またTACの細胞溶解活性に重要と考えられている、システインを含むTAC共通の11アミノ酸保存領域に、ILYの場合E→G、C→A及びW→Pの三つの置換があることを明らかにした。ところでこの領域のCはSH試薬に対する感受性をTACに付与し、WはTACのコレステロールを介して膜結合の後の毒素活性に必須と言われている。ILYの細胞溶解活性は、TACと異なりSH修飾による阻害を受けず、コレステロール阻害も受けにくいことを考え合わせると、この重要な部位の置換はILYのヒト特性に深く関与している可能性も考えられた。従って、この部位の点変異体を作りその活性の種特異性を調べることが今後の課題として残された。 2 ILYの作用機序の解析 ・ILYのヒト特異的な溶血活性は、ヒト赤血球でもその表面をトリプシン処理すると著しい阻害を受けることから、ILYの膜結合性を、ヒト及びウサギ無傷赤血球、ヒトトリプシン処理赤血球を対象に比較したところ、この三者でILYの結合性にほとんど差はなかった。この結果はILYの結合性に種特異性はなく、トリプシン処理はヒト細胞へのILYの結合を阻害しないことを示している。従って、ヒト特異的細胞溶解活性はILYの宿主細胞結合後に、ヒト細胞に特異的に存在あるいはヒト特異的構造を有するトリプシン感受性蛋白質とILYが相互作用して初めて起こることが示唆された。 ・明らかとなったILYの構造を持つ抗原ペプチドに対してモノクローナル抗体の作製を試み、ILYと結合してもILY活性を阻害しない3種の抗体を含め、全17種のILY特異抗体を得た。今後これらを用いて、親和性クロマトグラフィーによるヒト特異的トリプシン感受性蛋白質(ILY感受性因子)の精製やILY作用機序の研究を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Nagamune: "Intermedilysin,a Novel Cytotoxin Specific for Human Cells,Secerted by Streptococcus intermedius UNS46 Isolated from a Human Liver Abscess" Infection and Immunity. 64(8). 3093-3100 (1996)
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[Publications] 長宗秀明: "連鎖球菌の細胞溶解毒素" 生化学. 69(5)(印刷中). (1997)
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[Publications] H.Nagamune: "Streptococci and the Host(Thea Horaud,ed.)" Gustav Fischer Verlag(印刷中), (1997)