1996 Fiscal Year Annual Research Report
エンドサイトーシスにもとづく細胞の環境変動への対応機構の研究
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08878108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 智 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30183049)
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Keywords | エンドサイトーシス / Na^+ / H^+交換体 / 環境変動 / アクチン結合タンパク質 / 細胞外マトリックス / 細胞基質接着分子 / 細胞内信号伝達 / アミロリド |
Research Abstract |
ヒト培養細胞HT-180を研究材料に、細胞が、環境の浸透圧やpHの変動に対し応答する特性を評価した。細胞はpHを低下させると、Na^+/H^+交換体を用いてもとの状態にpHを回復させる。細胞はこの急激な変化応答に伴って、形質膜のラッフリングを伴って環境液相を大きな空胞に取り込む活動をおこした。この活動は、上皮性成長因子(EGF)添加によって引き起こされる活動、マクロピノサイトーシスと全く共通した形態的特徴があった。この様な応答は、細胞を浸透圧の低い培地中に段階的に移すとその都度誘導された。この活性はNa^+/H^+交換体を阻害すると起こらなくなることを見いだした。これらの結果から、Na^+/H^+交換体がクラスリン非依存性エンドサイトーシスの一つであるマクロピノサイトーシスの制御因子であることを示している。種々の検討から、この活動はNa^+/H^+交換体の活性状態とリンクしていることを強く示唆する知見をえた。さらに、ラッフリングの進展にアクチン結合タンパク質であるエズリン、収縮にゲルソリン、空胞の遊離にコフィリンが関与する証拠をえた。更に、Na^+/H^+交換体の阻害剤アミロリドの効果を研究する過程で、同物質の一連の脂溶性誘導体が細胞基質接着分子を特異的に内在化させる活性があることを見いだした。それにともなって、細胞は基質接着性を失い遊離した。これらの結果は、膜動態変化を伴う細胞接着の制御機構が存在することを示している。細胞の基質接着分子は、細胞外環境の変化を追随する重要な分子であるとともに細胞内状態変化を細胞外環境に伝達する分子としても重要であるので、今後の研究進展が期待される。
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[Publications] Papini.E.他: "The vacuolar ATPase proton pump is present on intracellular vacuoles' induced by Helicobacter pylori." J.Med.Microbiol.45. 84-89 (1996)
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[Publications] 佐藤 他: "Wortmannin and Li^+ specifically inhibit clathrin-independent endocytic internalization of bulk fluid." J.Biochemistry. 119. 887-897 (1996)
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[Publications] 佐藤 智: "ウイルス感染とエンドソームネットワーク" 生体の科学. 47. 305-312 (1996)
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[Publications] 佐藤 他一名: "日本生物物理学会編「生物物理から見た生命像」第2巻「生体膜」第5章" 吉岡書店(京都), 167 (1996)