1996 Fiscal Year Annual Research Report
無性生殖から有性生殖への切替えを誘導する物質の探索
Project/Area Number |
08878134
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
星 元紀 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (20012411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 和義 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (70222130)
松本 緑 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (00211574)
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Keywords | 有性生殖 / 無性生殖 / プラナリア / 性転換 |
Research Abstract |
多くの生物が無性生殖と有性生殖のいずれをも行うことができ、環境によって両者を使い分けている。一般に環境の悪化が無性生殖から有性生殖への移行を誘導することが知られているが、その機構についてはほとんど解析されていない。本研究の実験動物であるプラナリアDugesia ryukyuensisは同一種内に、生殖器官を形成せずに分裂のみで繁殖する系統(無性系)と、有性生殖を行う系統(有性系)を併せ持つ。我々はこの無性系固体に有性個体Bdellocephala brunneaを餌として与えることで性を誘導させることができる。このようにプラナリアでは環境的な要因以外の影響で人為的に無性生殖から有性生殖への移行を誘導することが可能である。これまでのところ、20℃(無性生殖のみを行う)の高温下で投餌を3日毎に行うことによって、1週間で約3割、3週間で約8割の個体に卵巣の発達が確認できた(精巣、交接器官の発達はみられない)。しかし、完全な性誘導個体が得られることは稀であり、ほとんど全ての個体が分裂してしまう。また、発達している卵巣は有性個体の投餌を停止すると退化してしまうのに対し、完全な性誘導個体は有性個体を与えなくても、性に携わる器官の退化は観察されない。これらのことから、一連の性誘導現象には重大な性転換時期があり、それを越えるまでは恒常的に有性個体中に含まれる性誘導物質を与えなければならないことが予想される。現在は以上の点を考慮して、より高頻度で完全な性誘導個体の得られる系を模索する一方で、性誘導現象の第一段階である卵巣の発達を基準にして、有性個体投餌後に特異的に発現している(抑制されている)遺伝子の単離をDiffrential Display法などにより試みている。
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[Publications] Nishigaki,T.et al: "Structure and function of Asterosaps,sperm-activating peptides from the jelly coat of starfish eggs." Zygote.4. 237-245 (1996)
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[Publications] Matsumoto M et al: "Cloning and sequencing of mouse complementary DNA for heme oxygenase-2." J.Biochem.120. 1079-1081 (1996)
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[Publications] 星 元紀: "今、動物学がおもしろい-動物はいかにして子孫を殖やすか-" 日本学術協力財団, 111 (1996)