1996 Fiscal Year Annual Research Report
複合微生物系の機能を利用した高度水処理技術の体系化とその評価
Project/Area Number |
08CE2002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 友矩 東京大学, 工学系研究科, 教授 (80010784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝沢 智 東京大学, 工学系研究科, 助教授 (10206914)
味埜 俊 東京大学, 工学系研究科, 助教授 (60166098)
山本 和夫 東京大学, 環境安全研究センター, 教授 (60143393)
花木 啓祐 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00134015)
大垣 眞一郎 東京大学, 工学系研究科, 教授 (20005549)
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Keywords | 複合微生物系 / 下廃水処理 / 水処理 / 高度処理 / 生物学的栄養塩除去 / 膜分離 / 健康関連微生物 / ポピュレーションダイナミクス |
Research Abstract |
1.各研究課題 下記の5つの研究課題をおこなっている。 (1).生物学的リン除去プロセス 生物学的リン除去プロセスに関する研究では、プロセス中の微生物の化学分類学的および遺伝子分類学的な動態解析手法を構築することを目的として研究を行った。本年度特に力を注いだのは活性汚泥中の微生物群をスライドグラス上に固定し、それに対してリボソーマルRNAを標的とする蛍光標識遺伝子プローブを作用させる、いわるゆるFISH法の適用性の検討である。FISH法を用いることにより、活性汚泥中の微生物相を単離・培養することなくあるがままに解明することが可能であることを確認することができた。 (2).生物学的窒素除去プロセス 硝化脱窒同時進行型のプロセス2基を運転し、硝化・脱窒過程における亜酸化窒素の挙動を解析した。窒素の安定同位体(^<15>N)を用いたトレーサー実験により、亜酸化窒素の発生の起源(硝化過程か脱窒過程か)を特定することができる。本年度はそのための実験手法についてほぼ確立した。本年度得られた実験データの範囲では、硝酸起源の亜酸化窒素がほとんどであり、無酸素条件下だけでなく好気条件下でも脱窒により亜酸化窒素が発生するという結果であった。 (3).排水からの有価物の回収 廃水から回収可能な有価物として、生物分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカノエイト(RHA)に注目して検討を行っている。本年度は嫌気好気法の変法の一つである窒素リン同時除去法の汚泥を用いて硝酸を電子受容対としたPHA生産の可能性について検討した。その結果、酸素ではなく硝酸を電子受容体としてもPHA生産を行いうることがわかったが、PHAの生成速度は好気条件下の半分程度であった。一方、光合成非イオウ細菌(R.sphaeroides)による排水からのPHAおよびタンパク質の生産の可能性については、硫化物濃度、通気条件、および光照射条件について検討を行った。硫化物については10mgS/l程度でも増殖に悪影響を与えること、微量な通気でも菌体のPHA含量が低下することが明らかになった。 (4).高効率水処理用膜分離バイオリアクターの開発 実験室規模、および実際に稼働している膜分離活性汚泥プロセスについて、硝化・脱窒活性、ATP含量、脱水素酵素活性、および、原生動物等の大型微生物を含めた微生物種構成について基礎的な検討を行った。一般の活性汚泥法に比べ、膜分離活性汚泥法では微小動物叢が不安定であり、特定の微小動物が数多く、しかも大きな変動とともに計数されることがわかった。また、ATP含量や脱水素酵素活性の測定から、膜分離バイオリアクターでは汚泥単位量あたりの微生物活性が通常の活性汚泥法に比べて低いことが明らかになった。 (5).病原ウイルスの挙動解析と水の再利用のための消毒法の評価 本年度は大腸菌ファージQβを用いてMPN-PCR法によるウイルスの定量的検出の検討、およびそこで開発された定量法を用いて各種消毒法の消毒効率を評価する際の基礎データの取得を行った。MPN-PCR法ではオーダー程度の定量性が得られることがわかった。一方、塩素消毒や紫外線消毒をしたときのウイルスの不活化速度をMPN-PCR法と従来のプラーク法で比較した場合、PCR法ではプラーク陰性のQβを陽性と検出してしまうことがわかった。PCR法は様々なウイルスの検出に有効な方法であるが、消毒効率の検討のためにPCR法を用いるためには更なる検討が必要である。 2.研究拠点の形成 本年度は全体計画として、拠点形成に必要な基盤整備のための一年であると位置づけて、設備・備品の購入と整備を行うとともに、研究者の派遣・招聘を通じて国内・海外の関連する研究者とのネットワークの構築をはかった。内外の研究者との学術的交流を深めるために、海外から四名の講師を招聘し、ワークショップを行った。ワークショップでは学内からの参加者約40名の他、外部からは大学・研究機関・企業・自治体等の研究者約80名が参加し、活発な議論が交わされた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Wen-Tso Liu: "Internal Energy Based Competition between Polyphosphate-and Glycogen-Accumulating Bacteria in Biological Phosphorus Removal Reactors---Effect of P/C Feeding Ratio" Water Science and Technology. (受理済み).
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[Publications] Fumiyuki Nakajima: "Organic Wastewater Treatment without Green-house Gas Emission by Photosynthetic Bacteria" Water Science and Technology. (印刷中).
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[Publications] 中島典之: "紅色非硫黄細菌Rhodobacter sphaeroidesを用いた排水処理・有価物生産における二酸化炭素の発生および摂取量の定量" 土木学会論文集VII. (審査中).
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[Publications] 岩本友里奈: "微好気-好気法で馴養された活性汚泥による生物分解性プラスチック(Polyhdroxyalkanoate)の生産" 土木学会論文集VII. (審査中).
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[Publications] 西田継: "薄膜酸化チタンを用いた光触媒反応による水中フェノールの分解と大腸菌ファージQβの不活化" 環境工学研究論文集. 33巻. 133-145 (1997)
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[Publications] Boran Zhang: "Seasonal Change of Microbial Population and Activities in a Building Wastewater Reuse System Using a Membrane Separation Activated Sludge Process" Water Science and Technology. 34巻・5/6号. 295-302 (1996)