2008 Fiscal Year Annual Research Report
明治憲法体制から日本国憲法体制に至る歴史的連続性についての研究
Project/Area Number |
08J00039
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
林 尚之 Osaka Prefecture University, 人間社会学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 憲法史 / 近代史 / 明治憲法 / 国家無答責の法理 / 国体論 / 立憲主義 / 主権論争 |
Research Abstract |
本年度の研究実績の概要は次の通りである。 1 明治憲法の法構造の一端を正統的学説であった美濃部憲法学の自由権論、国家賠償責任論の分析から明らかにすることで、近代日本における「国家無答責の法理」の論理構造を探り出した。美濃部理論では国家と国民は社会に貢献する存在として一体不可分であると前提されており、国家の不法行為による個人の損害賠償責任は社会全体の責任として吸収される論理構造になっていた。すなわち、公権力とは社会力という外部に拘束された存在であり、社会を進歩発展させていく限りにおいて公権力の正当性は保障されていた。美濃部理論の検討を通じて、近代日本では国家無答責の法理は、制定法でも慣習法でもなく社会によって担保されていたことが明らかとなった(「戦前日本における『国家無答責の法理』」)。 2 国体憲法学派の国体論、国家論の検討を通じて憲法擁護の実相を探り、その考察から戦前日本の立憲主義の意味を検討した。その結果、先行研究では神懸かり的な観念右翼という評価を受けていた国体憲法学派はむしろ立憲学派が行き着いた限界を超克せんとした潮流であり、天皇機関説事件における美濃部批判、新体制期における黒田覚などの新体制派の憲法制定権力論批判のなかで登場した国体憲法学派の国体規範論は、憲法外の制憲権の主体としての天皇をいかに制限するかという立憲主義の課題に応えるものであったことが明らかになった(「戦時期における憲法学と国体論の展開」)。 3 一九三〇年代の主権及び人権をめぐる憲法論議の検討を通じて明治憲法の危機と日本国憲法の成立との内的関連性を明らかにした(博士学位論文)。
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