2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀アメリカ経済学の方法論と思想におけるオーストリー的源泉
Project/Area Number |
08J00784
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉野 裕介 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 経済思想 / 経済学説史 / アメリカ研究 / ハイエク / ウィーン / 20世紀 / 移民 |
Research Abstract |
本研究の主目的は,戦後のアメリカ経済学に与えたオーストリー経済学の影響を,その経済学方法諭とそれを基礎とした経済思想の観点から明らかにし,それをもとに新しい自由な社会像を構想することにある。これらの研究は,人の移動と学術・知識の発展を関連づけ,その影響によってもたらされる経済社会に関する考え方・ビジョンの変化を問う思想史的研究である。 これに取り組むための第一段階として,本年度の研究目的を以下のように定めた。1.オーストリーからアメリカに渡った経済学者の影響を考察し,戦後アメリカにおける経済学発展の一側面を明らかにする。20世紀のアメリカ経済学には,多様な源泉が考えられるが,本研究ではオーストリー経済学の存在が小さくないと考え,そのアメリカ経済学への影響を,その方法論と思想の側面から明らかにする。 具体的には,ハイエクを含むオーストリー経済学の経済学者たちが,20世紀の知的世界にどのような影響を与えたのか,オーストリー経済学のアメリカへの普及を中心に考察する。本年度は,オーストリー経済学の普及を調査するため,台湾・中央研究院欧米研究所と英国・ロンドンスクール・オブ・エコノミクスを調査した。 ここでは,特に世界に広がるオーストリー学派の経済学者や,ハイエクを研究する研究者たちと交流を持つことができた。またここでの現地調査により,ハイエクが日本を含む台湾・中国などの東アジア諸国でどのように受容されていたのかの考察に資する資料にあたることができた。諸外国における人の移動と学術・知識の発展を関連づける観点から,オーストリー経済学め外国への普及と,それによる経済学方法論・経済思想への影響を考察する準備となったことは多いなる収穫である。またハイエクの日本での普及と関係して,21年度刊行予定の『第二期ハイエク全集・思想史論集』(春秋社)の翻訳に携わった。
|