2008 Fiscal Year Annual Research Report
公正行動の心理メカニズム:適応基盤からのアプローチ
Project/Area Number |
08J01147
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀田 結孝 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 公正感 / 社会的交換 / 利他行動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年の経済学における公正研究の背後にある進化・適応的観点を導入し、これまで公正性の追求という同一原理として捉えられてきた公正行動に、複数の適応基盤が存在することを示し、公正行動の領域特定性という新たな視点を、社会心理学の公正研究に導入することにある。いくつかの研究を通して,公正行動には、交換場面での悪評を避ける"一般交換システムへの受容"、行動の一貫性を保つことで他者からの搾取を防ぐ"コミットメント問題解決"の少なくとも2種類の異なる適応基盤が存在する可能性を指摘することを試みる。 平成20年度は主に、これまで行った研究の成果を国内・国際学会において公表した。研究発表と並行して、公正行動の適応基盤を検討する目的の実験に着手した。不公正是正行動がいかなる場面で適応価を得るかを探索することを目的とし,不公正是正行動を行った者が他者にいかなる印象を与えるかを検討する実験を行った。具体的には,不公正是正行動を行った者と行わなかった者が登場するシナリオを参加者に提示し,それぞれの人物に対していかなる印象を抱くか,また複数の実験ゲーム(囚人のジレンマゲーム・最後通告ゲーム・独裁者ゲーム・信頼ゲーム)をそれぞれの者と行うとしたらどちらを相手として選びたいと思うかを回答させ,不公正是正行動を行った者がいかなる場面で利益を得るかを探索した。その結果,不公正是正行動を行った者は,他者から信頼を得られやすいが,報酬を与える相手としては選ばれにくい傾向にあることが明らかにされた。 また本年度はこれまでの研究成果を論文としてまとめ,1件がワーキングペーパーとして掲載され,更に1件が『心理学研究』に投稿され現在査読中にある。
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