2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川戸 貴史 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員PD
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Keywords | 日本史 / 中世史 / 経済史 / 貨幣 / 撰銭 / 中近世移行期 / 悪銭 / 地域通貨 |
Research Abstract |
本研究は、15〜17世紀日本における貨幣流通の諸問題について具体的に分析しつつ、当該期における経済構造そのものの変容を位置付けるものである。 そのうち本年度は15〜16世紀の日本における貨幣流通の実態について深く追究することを目的とした。まずは15世紀における室町幕府の日明貿易における直接の明銭輸入について具体的に史料を用いて検討を行った。その結果、輸入額の規模は当時の経済規模に比べてればきわめて限定的なものであることを指摘した。すなわち従来で強調されるような、室町幕府が明銭を独占的に輸入し、それを国内に流布させる権利を一手に握ったとする「貨幣発行権」を保持していたとは認められないことを主張した。 また、16世紀を中心とした貨幣流通の構造的変容について、これまでに行ってきた研究や、最近の研究成果も参照する形で、総合的に位置付ける作業も行った。そこでは、中世後期における流通構造の変化に伴い、各地で地域内流通秩序が発達した結果、地域内流通を担う「地域通貨」が発生したことを指摘し、同一の秩序を共有しない地域へ移出された場合、それらは「悪銭」として排除の対象となることを指摘した。 そして、これまでに行ってきた研究を一書にまとめ、刊行した。15世紀後半〜17世紀前半における日本の銭貨流通について、当該期に頻出する「悪銭」が「地域通貨」であることを主張し、また、近世の貨幣流通秩序(三貨制度)の確立過程について、当該期をひとつのスパンとみなして検討を行ったものである。
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Research Products
(3 results)