2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01220
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牛島 光一 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | タイ / 就学性差 / 医療保障制度 / 予備的貯蓄 |
Research Abstract |
本年度は、以下の2つの研究を実施した。第1に、なぜタイでは女性は男性より長く教育を受けるのかというテーマを扱った。タイでは、1970年代前半に生まれた世代から女性の平均教育年数が男性の平均教育年数を上回るようになった。途上国を対象とする多くの先行研究では男性がより教育を受ける理由について明らかにしているが、女性の教育水準が上回る例は少ない。そこで、この研究では、社会経済的背景と文化的背景を考慮した仮説を立て検証した。その結果、タイでは文化的な影響よりも社会経済的な理由で女性がより教育を受けていることが明らかになった。第2に、医療保障制度の導入が家計の予備的貯蓄に与えた影響というテーマを扱った。2002年4月、タイでは、全ての国民が何らかの医療制度に加入し、安価に医療サービスにアクセスできることを保障する30バーツ医療制度が実施された。30バーツ医療制度の対象者は一度の外来診察または入院に際し30バーツ(約90円)を支払うだけで医療サービスを受けることができるというものである。この制度の導入前に医療保障を受けていたのは、公務員とその家族か大企業に勤める会社員のみであったため、それまで医療保障を受けていなかった家計(主にインフォーマルセクタ)の医療サービスへのアクセスは改善された。30バーツ医療制度の導入によって病気による所得減少のリスクが減るのであれば、流動性制約に直面した「用心深い」家計は予備的貯蓄を減らすはずである。そこで、この研究では、どのような社会経済的特徴をもった家計が病気に備えて貯蓄を行っていたのかを検証した。分析の結果、農家のような所得の季節性がある社会経済的特徴をもった家計では貯蓄を減少させていることがわかった。
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