2008 Fiscal Year Annual Research Report
視覚情報の時間知覚への影響を利用した脳内時間情報処理の解明と映像メディアへの応用
Project/Area Number |
08J01234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大山 潤爾 The University of Tokyo, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知覚 / 視覚 / 時間 / 脳 |
Research Abstract |
視覚情報が時間の知覚に与える影響の解明を目指し、これまで我々は、物体の運動する映像中におこる視覚的な変化が他の視覚的なイベントの時間知覚に影響を及ぼすかを調べてきた。その結果、視覚的な変化(色の変化)が予測できないタイミングで起こった場合、他の視覚イベント(フラッシュ)の時間知覚を歪めることを示した。すなわち、予測不可能なタイミングで起こった視覚的な変化の前後で起こる別の視覚的なイベントは、視覚的な変化のタイミングに引き付けられて知覚される。同様の時間知覚の圧縮現象は、視覚と聴覚のmodality間において報告されている(Fendrich&Corballis,2001)。さらに、サッケード眼球運動の報告では、サッケードの直前に提示された視覚刺激の時間知覚には影響を及ぼすが、聴覚刺激(クリック音)の時間知覚には影響を与えない、すなわち、時間あ圧縮が視覚とサッケードに特異的に起こることが報告されている(Morrone et al.,2005)。このことから、我々の示した時間知覚の引き込み効果がcrossmodalで起こるかを確認することは、先行研究との関連を考察する上で重要な課題であった。そこで、新たに視覚刺激(フラッシュ)の代わりに聴覚刺激(短い音)を用いることで、聴覚刺激の時間知覚が視覚的な色の変化に引き付けられるかどうか検証した。実験の結果から、予測不可能なタイミングで起こる映像の視覚的変化に、音刺激が引き付けられて知覚されることが示された。従って、聴覚刺激でも、視覚刺激同様、映像の変化に対する時間的引き込みが起こると考えられる。本年度の研究結果によって、時間知覚の引き込み効果は、サッケード研究における時間の圧縮現象と異なり、視覚情報が時間情報処理に与える影響を反映している可能性が示された。
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