2009 Fiscal Year Annual Research Report
政治的公共性と「実存」-ハンナ・アーレントにおける思想生成の構造-
Project/Area Number |
08J01279
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 陽子 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 哲学すること / ハンナ・アーレント / 実存哲学 / 公的空間 / セイレン・キルケゴール / 全体主義 |
Research Abstract |
ハンナ・アーレントの1930年代の論考が、その後の著作に重要な影響を与えていることを論証するため、当該論考の原文による読解をおこなった。「哲学と社会学」と「セイレン・キルケゴール」、更に草稿である『カール・マルクスと西欧政治思想の伝統』との論考を中心的に読み解くことで、アーレントの思想が、「哲学すること」に重点をおいた上で、「哲学」から「社会学」、そして「政治」へと徐々に変遷していく過程をつぶさに追うことができた。1920年代のアーレントの思想から連綿と受け継がれる、「実存哲学」思想が、『全体主義の起源』までの論考の中に主軸として見出されることを確認した。従来の研究ではこのアーレントの「実存哲学」思想には、全体主義につながる契機となるのではないかとの危惧から、重要視されることはなかった。しかし、この「実存哲学」こそが、アーレンとの人間の「複数性」と「個別性」とを訴えかける貴重な契機となっていることがわかる。この成果を神戸大学で開催された社会思想史学会の個別セッションにおいて報告することで、より多面的な見地から、再確認する重要な機会を得ることができた。また、1920年代から1930年代にかけてのアーレントの思想を改めて追う中で、「公的空間」における「創造の契機」こそが重要である、というアーレントの思想的必然性を見出すことが可能となった。このことは、神奈川大学で開催されたジェンダー法学会にで、個別報告を行い、他の様々な関連研究者から理解を得ることに成功した。このことは、アーレントの「公的空間」が、その中での問題解決を最初から見込んでいるものではないとする、思想射程を明確化する機会ともなった。 上述してきた研究成果を、更に全国学会で他のアーレント研究者と意見交流をはかることで、発展させ、アーレントの思想における「他者存在」と「政治的公共空間」とがどのようにその思想の中核となっていったかを明確化してきた。
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Research Products
(2 results)