2008 Fiscal Year Annual Research Report
有機鉱物の生成過程:岩石圏における有機分子の動的挙動の解明
Project/Area Number |
08J01531
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
越後 拓也 Japan International Research Center for Agricultural Sciences, 利用加工領域, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 針鉄鉱 / 生成温度 / 表面構造 / 結晶形態 / X線光電子分光 / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
針鉄鉱の生成温度がその表面構造に与える影響を、結晶の形態観察や最表面の化学分析に基づいて考察することを目的とし、以下のような実験と考察を行った。 針鉄鉱の合成実験は、最も一般的な合成方法であるSchwertmann&Cornell(2000)に従い、Fe^<3+>(NO_3)_3・9H_2OとKOHを出発物質として行った。合成温度は5℃・30℃・50℃・70℃とした。生成した褐色の沈殿物を粉末X線回折法および赤外線吸収分光法により針鉄鉱と同定した後、走査電子顕微鏡(SEM:JEOL JSM-5600LV)で結晶形態を観察し、X線光電子分光法(XPS:VG-SCIENTA ESCA-300)で結晶最表面の化学分析を行った。 SEM観察の結果、高温で合成した針鉄鉱は粒径が大きく(>1μm)、低温で合成した針鉄鉱は粒径が200nm以下と極めて小さいことが判明した。いずれの条件においても結晶の形態は針状であり、その成長速度に強い異方性があることが分かる。XPS分析の結果、5℃で合成された針鉄鉱のOlsスペクトルは529.66eVと531.00eVに位置する2つのピークで構成されており、3つのピークで構成される70℃で合成された針鉄鉱のそれとは大きく違うことが判明した。以上のように、生成温度の違う針鉄鉱は、結晶の形態および最表面の化学状態が大きく違うことが明らかになった。この結果は、針鉄鉱表面への各種イオンや分子の吸着メカニズムを研究する場合、針鉄鉱の生成条件を考慮する必要があることを示唆している。
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Research Products
(5 results)