2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01655
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舞木 昭彦 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 富栄養化 / 群集 / 適応 / 進化 / 外来種 / 表現型可塑性 / 個体群動態 |
Research Abstract |
富栄養化の逆理と呼ばれる生態学における問題がある。食物連鎖における基底の生物の資源の大きさが相互作用系の安定性に大きく関わり、栄養が大きいほど種の絶滅を導くほど不安定になるという逆説的な結論が理論研究によって示されているが、このようなことは自然界ではほぼ見られない。この問題を解消する1つの要因として、私は「生物の適応的振る舞い」や「形質の進化」を考案し、3つの国際誌に公表した。 生物群集はどのように進化していくのか、その運命にはどのようなファクターが重要なものか、という問題は理解が乏しい。この問題に対し、他種の移入の効果についてはほとんど理論的な仕事がない。私は種分化、絶滅によって形作られる群集形成過程において、他種の侵入タイミングが大きく群集進化の運命を決めることを数理モデルで示した。この成果は一報の投稿論文としてまとめ、現在某国際誌で審査中である。 外来種の侵入が在来群集の運命にどのような影響を与えるのかを理解することは保全学的にも、生態学としても重要である。この問題を理解する新しい理論を提案した。それは、外来種が過去にいた群集系での進化的歴史を考慮した理論である。この成果は一報の投稿論文としてまとめ、現在某国際誌で審査中である。 生物の多くは表現型可塑性という性質をもっている。捕食-被食系において、誘導防御、誘導攻撃といった可塑性がしばしばみられる。これらは適応的な形質として解釈できる。最近ではこのような世代内で急速に変化する形質動態の個体群動態への効果に興味が持たれている。特に面白いのはこれら可塑性が種間で対抗的に示される可能性である。私は、このような対抗的な表現型可塑性が進化し、維持される条件を数理モデルで解析した。その条件は面白いことに実証研究で示されているものと見事に一致している。この成果は、3報の論文としてまとめ、一報は国際誌で審査中、他は投稿準備中である。
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