2008 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシアにおける森林保護制度をめぐる地域住民と行政の協働に関する研究
Project/Area Number |
08J02709
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
内藤 大輔 Research Institute for Humanity and Nature, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | マレーシア・サバ / 森林認証制度 / 森林管理協議会 / オラン・スンガイ / 生業変容 |
Research Abstract |
本研究では、マレーシア・サバ州において、森林管理協議会(Forest Stewardship Council:FSC)による森林認証を取得しているデラマコット森林施業区周辺を主調査地とし、そこに隣接している先住民オラン・スンガイの村落(W村)を対象にして、森林認証制度の導入による地域住民と林業局の協働について調査することを目的としている。 本年度はW村において、森林認証制度の導入による影響を明らかにするべく、世帯調査、ライフヒストリーの聞き取りなどを行った。また地域住民の森林利用の変遷について聞き取り調査を実施した。 オラン・スンガイの人々は、サバ州キナバタンガン川流域において、古くから焼畑・漁撈・森林産物採集をして暮らしてきたが、商業伐採の開始に伴い村に隣接して伐採キャンプができたことにより、多くの村人が伐採労働者として雇用され、また村で生産された野菜や魚の販売などで経済的な恩恵を受けてきていた。しかしながら商業伐採の急速な衰退により、村では、かつての焼畑・漁撈を再び行う人、残り少ない木材資源を採集する人、ゴム、アブラヤシなどを植栽する人、都市部に出て、新たな労働機会を求める人などがおり、生業形態の模索が続いていることが分かった。その状況のなか、森林認証制度の導入により、簡易水道システムの導入や幼稚園の建設により利益を得ていた。一方で、林業局は許可のない森林伐採や狩猟などを規制するなど、森林施業区の境界管理を厳格化しており、村人のこれまでの慣習的な森林利用や生業活動に対し、大きな影響をもたらしていることが明らかとなった。
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