2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02786
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田井 明 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有明海 / 八代海 / 干拓 / 潮汐 / POM / 固有周期 / 調和分解 / M2潮増幅率 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度作成した微量水銀の動態予測モデルの構築のために必要となる基礎コードを用いて八代海および有明海の潮汐・潮流特性を解析した.特に,実際に水銀汚染が生じた1960年以前の八代海についてはその流動は知られておらず八代海沿岸の干拓,さらには実測データの解析も行ない検討を行った.有明海および八代海では,排水不良の改善や農業振興のため古くから干拓が進められてきた.干拓による地形の変化は湾の固有周期を減少させ,共振潮汐が卓越する両海域の潮汐・潮流現象に影響を及ぼす.Manda and Matsuoka (2006)は1940年代と90年代の潮流の比較し,現在までに生じた有明海奥部での潮流減少の大部分は諫早湾干拓事業以前の干拓によるものであることを示した.しかし,潮汐の長期変動に関しては,現在までに詳細な検討は行われていない.そこで,本研究では実測潮位データの解析と数値シミュレーションによって,有明海および八代海の潮汐振幅の長期変動を調べた.実測データの解析から,近年の有明海・八代海では1930年以降で最もM2潮振幅が小さいことが示された.また,海岸線の変化が潮汐へ与える影響を数値シミュレーションで評価した結果,1900年以降実施されてきた干拓の影響により,潮汐振幅は湾奥で減少,湾口で増加してきたことが分かった.また,諌早湾干拓事業以前の干拓による影響と諫早湾干拓事業による影響は同程度であることが分かった.さらに,潮汐データの解析と数値シミュレーションの結果から,過去80年間に生じたM2潮振幅の減少の大部分は,干拓などの海岸線の変化ではなく,外海のM2潮振幅の減少によるものであることが示された.
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