2008 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴの種多様性維持を目的としたキクメイシ科サンゴ種苗生産技術の開発
Project/Area Number |
08J02948
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大久保 奈弥 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 日本学術振興会特別研究員(PD) (50401576)
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Keywords | サンゴ / 種苗生産 / 移植 / キクメイシ / 第2軸 / 発生 / 原腸形成 / 保全 |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、有性生殖を利用したキクメイシ科サンゴの種苗生産技術を確立することにより、衰退が著しいサンゴ礁の種多様性を維持するための積極的な回復(増殖)の方策とし、サンゴ礁の資源保全に貢献することである。第1年目である今年度は、1)キクメイシ科サンゴの配偶子を採取・媒精し、発生過程の観察を行い、胚・幼生を移動・操作できる時期の決定を行った。 2008年4月から8月、和歌山県白浜と沖縄にて、キクメイシ科サンゴの配偶子採取・媒精・発生過程の観察・生残率の測定を行った。2008年9月から2009年3月まで、採取したキクメイシ科サンゴの組織切片を作製し、内部組織の観察を行った。その結果、キクメイシ科サンゴの卵は卵黄が大量に存在するにも関わらず、卵割は全等割であった。第1卵割は動物極から始まり、刺胞動物に特異的なハート型の胚となった。第2卵割も動物極から始まり、形が軟体動物に見られる螺旋卵割に似ていることから、偽螺旋卵割と呼ばれている。第3卵割は動植物極とは垂直方向に起こった。この時期からだんだんと発生の進み具合に個体差が見られるようになり、16細胞期以降は不等割となった。放卵放精から8時間後、桑実胚はだんだんと表面が滑らかになり、核は各細胞の表面へ移動していった。丸型だった胚は、動物極と植物極を結ぶ線ではなく、それに対して垂直の線(directive axis)に沿って平板状になった。現在までのミドリイシ科サンゴの発生では、動物極と植物極を結ぶ線にそって平板状になったが、それ以外の第2の軸に沿って発生過程を行うのはサンゴでは初めての観察である。10時間後には、平板状となった胚が、再度、丸型胚となった。丸型に近づくにつれ、動物極側がくぼみ始め、原腸形成が始まり、泳ぎ始めた。キクメイシ科の幼生は二日後あたりからすでに着底行動を始めたことから、ミドリイシ科の幼生とは異なり、着底する期間もミドリイシ科より短いことが判明した。
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