2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03996
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
倉田 明子 International Christian University, アジア文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | プロテスタント / 宣教師 / 上海 / 香港 / 梁発 |
Research Abstract |
本年度は、まず1860年前後の香港及び上海における中国人知識人に関する研究を進めるための史料収集を行った。近年欧米で発表された中国で活動した宣教師に関わる新たな研究成果を吸収し、香港や上海において活動していた米国の伝道会に関連する諸史料を香港にて収集した。また当時の雑誌や新聞など日本では手に入らない史料も入手することができた。また、太平天国運動とも接点があったと言われる福漢会の活動や、福漢会と関わりの深かったバーゼル伝道会の活動にも改めて注目し、バーゼル伝道会の原史料の読解も進めた。 次に1807年に始まった中国におけるプロテスタント・キリスト教の布教の歴史を概観し、宣教師とその中国人アシスタントの関係に目を配りながら、本研究の主要テーマである1850、60年代に至る以前のキリスト教布教の様相を明らかにする研究を行った。この成果は『アジア文化研究』第35号に掲載された。この論文では、19世紀前期に中国にやってきたプロテスタントの宣教師たちは、欧米での信仰覚醒運動という共通の底辺をもちつつも、各々信仰的な背景も性格も異なっており、中国人への接し方今布教のスタンスは様々であったこと、それでも宣教師間で様々な形での協力関係が成り立っていたこと、また最初の約30年の間に獲得された信徒はわずかで、その多くが梁発の布教によって獲得された信徒であったこと、また梁発の布教活動は、彼自身の裁量による部分が大きかったことを指摘した。そして1830年代初めという時期に梁発がかなり自由に活動できる空間があったことが、『勧世良言』などの梁発オリジナルの布教書を生み、さらにそれらを科挙の試験場で配付する活動へとつながったのであり、結果的に後の太平天国運動を生じさせるきっかけともなったことを指摘している。
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Research Products
(2 results)