2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光体の理論設計に向けた計算化学手法による構造・物性・機能の関連性の解明
Project/Area Number |
08J04102
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大沼 宏彰 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛍光体 / 量子化学 / 量子効率 / 励起エネルギー / 定量的構造物性相関 / 発光波長制御 |
Research Abstract |
本研究は,蛍光体の理論設計手法を確立すること最大の目的とし,このために3年間で「蛍光体の結晶構造・電子状態・発光特性との関連性確立」を目標としたものである.本年度は具体的に次の3つの事項について研究を進めてきた.実施項目の詳細については,当初予定していた研究実施計画とは異なっている部分もあるが,いずれの事項も本研究の目的である「理論設計手法の確立」に向かっているものである. 1.Eu^<2+>付活蛍光体の電子状態の詳細な解析:Eu^<2+>付活BaMgAl_<10>O_<17>蛍光体の電子状態をより詳細に解析した.結果,Eu第一近接のアニオンに加えて,従来注目されていなかった第二近接のカチオンの重要性を示した.Eu周辺アニオン/カチオンはEu5d軌道を不安定化/安定かすることを示した.またEu^<2+>付活CaAlSiN_3についても詳細な電子状態解析を行い,異なる蛍光体においても同様の相互作用が見られることを確認した. 2.定量的構造物性相関(QSPR)による発光ピーク波長予測:結晶中でのEuの受ける相互作用を表す値「構造指数(SI)」を定義した.発光ピーク波長の算出を目指し,SIを入力値として重回帰分析を行った.この結果,予測値と実測値の相関係数0.85となるEu^<2+>付活蛍光体の発光ピーク予測式を得ることが出来た. 3.発光効率算出方法の開発:量子化学計算の結果を入力として光励起定常状態における量子効率を算出するため方法を開発した.これは,各励起状態の状態数の時間変化に関する微分方程式を連立し,それを定常状態の条件下解くことで量子効率を算出するものである.各励起状態の状態数の変化として,光照射による状態生成・再結合による励起状態の消滅・電気双極子遷移・格子振動による無輻射遷移を考慮している.今後は,定量性向上に向けて,(1)格子振動効果の定量的な取り込み,(2)電子状態計算精度に取り組むことを予定している.
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Research Products
(7 results)