Research Abstract |
本年度は,光合成細菌進化の地球史を通した総合的な理を目指して,クロロ色素とその分解物を指標として用いて過去の水界の生物活動,代謝,並びに古環境を復元するための,方法論の確立に重点を置いて研究を展開した。本年度の第一の取り組みとして,自身のこれまでの研究内容を含めた先行研究に関する網羅的な検証を行い,今後の研究分野の方向性の指針となる論文をまとめ上げた。これにおいて,「分子化石のタフォノミー」という新しい概念を提唱した。研究対象である有機分子(クロロフィルおよびその地層中から見つかる誘導体を包含する)に関して,(1)有機化学的な視点からの研究の重要性を認識し,有機合成による化合物の性質の分析の試み,及び重要天然化合物の半合成による標品の作成を行った;(2)生物学的,特に近年急速に発展を遂げつつあるプロティスト研究分野との連携・環境生物学的な視点の導入を試みるべく,微生物生態学会,国際生物学賞記念シンポジウム,藻類学会,光合成学会などで自身の研究を発表し,新たな研究分野間の連携の道を模索した。その成果として,23年度の日本地球惑星科学連合大会において,分野融合型の研究セッションを代表コンビーナとして立ち上げることが出来た(B-BG21「光エネルギーを巡る生命システムの進化ダイナミクス」);(3)さらに,理論モデル研究者と共同研究を行い,石油の根源岩となるような非常に有機物に富む堆積岩の形成における真核藻類の役割の重要性と,その進化がもたらした古海洋環境の変遷に関する研究を遂行し,論文を投稿した。
|