2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベータ・バナジウム・ブロンズにおける金属絶縁体転移と圧力誘起超伝導の解明
Project/Area Number |
08J05321
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 一宏 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強相関電子系 / 3d遷移金属酸化物 / 核磁気共鳴 / 金属絶縁体転移 / 高圧物性 |
Research Abstract |
擬一次元導体ベーダ・バナジウム・ブロンズβ-A_<0.33>V_2O_5(A=Li,Na)は、金属絶縁体転移と圧力誘起超伝導を示す物質である。我々は、本研究課題の開始までに、A=Naの常圧下における電子構造と磁気揺らぎ(本年度「11.研究発表」の「雑誌論文」の1番目として出版)を明らかにしてきた。本研究では、それらのAイオン依存性と圧力依存性を調べ、金属絶縁体転移と超伝導の発現機構の解明を目的とすることを交付申請書の「研究の目的」に記載した。この目的の達成のため、本年度は「研究実施計画」にあるように、β-Li_<0.33>V_2O_5のNMR測定を行い、Aイオンが作るポテンシャルの変化に伴う電荷不均化と磁気揺らぎの異常な増強を観測した。これらの結果の重要な点は、β-A_<0.33>V_2O_5(A=Li,Na)のVの電子状態がAイオンに大きく依存することを明らかにしたことである。また、2軸回転機構付き高圧セルの開発とそれを用いたβ-Na_<0.33>V_2O_5のNMR測定を行う計画も記載した。本年度は、ブリッジマンアンビル型とピストンシリンダー型の2種類の高圧セルを完成させ、後者を用いた1.2GPaにおけるβ-Na_<0.33>V_2O_5の角度回転型NMR測定に成功した。また、本研究課題開始前から行っていた(角度回転機構の無い)高圧セルを用いた約9GPaまでのNMR測定が完了し、反強磁性相と超伝導相が温度-圧力相図上で隣接することを明らかにした(「雑誌論文」の2番目)。これらの結果は、超伝導の発現機構の解明に重要な寄与を与えると考えられる。以上の結果は、「研究実施計画」にあるように、日本物理学会とオランダで開催されたthe 25^<th> International Conference on Low Temperature Physicsにおいて報告した(「学会発表」の1,2,3,4,8,9番目)。
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