2008 Fiscal Year Annual Research Report
ある型の多次元確率微分方程式の解の一意性とその挙動について
Project/Area Number |
08J05385
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
楠岡 誠一郎 Keio University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 確率微分方程式 / マリアバン解析 / 絶対連続性 / 密度関数の存在 / 基本解の存在 |
Research Abstract |
研究課題である、係数の滑らかさがリプシッツ連続より弱く、部分的に係数が退化した型の確率微分方程式について、その解の挙動について研究を行った。その結果、一部の係数の滑らかさがリプシッツ連続より弱く係数が退化した確率微分方程式の解か密度関数を持つということを結論付けることができた。得られた結果の証明では、今までマリアバン解析を適用できなかったような条件の悪い確率微分方程式に対してマリアバン解析を用いるために、全く新しい画期的な手法を用いている。その手法というのは、確率微分方程式に対してマリアバン解析において重要な役割を担うH-微分を施し、その1次モーメントを評価するというものである。この評価によって、拡散係数の滑らかさがリプシッツ連続よりも悪い確率微分方程式に対しても、マリアバン解析を適用できるようになった。この評価は、マリアバン解析だけでなく、確率解析における他の理論に対しても適応可能であると考えている。その評価を用いることによって、拡散係数が有界連続関数でドリフト係数がリプシッツ連続であるような確率微分方程式の解か、再生核ヒルベルト空間の元hを定めるごとに、h方向に関して有界変動関数であるということを得た。これは、拡散係数がリプシッツ連続でない場合、確率微分方程式の解かソボレフ空間に属するかどうかはわからないが、h方向に関して有界変動関数であることは得られるということである。そこで、ソボレフ空間よりも広いクラスとして、h方向に関して有界変動関数であるような関数のクラスを定めた。そして、確率微分方程式の解がそのクラスに属する条件を求め、クラスの元に対する解析を行い、解の密度関数の存在性を示したというのが、今年度の成果である。これは確率微分方程式で記述される現象の解析において有用た結果である。
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