2008 Fiscal Year Annual Research Report
南北戦争下における解放民教育と人種・ジェンダー編制:米国南部「再建」に関する研究
Project/Area Number |
08J05487
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
荒木 和華子 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 解放民教育 / 領域分離 / 他者教育 / アボリショニスト / 奴隷解放 / アメリ合衆国南部再建 / 人種 / ジェンダー |
Research Abstract |
今年度はまず年度はじめに米国へ出張し、5名の専門家と意見交換を行った。続いて、史資料の収集、マイクロフイルムの解析作業、論文の執筆作業進めた。成果として、The Japanese Journal of American Studies掲載論文では、奴隷解放後南部での解放民救助と教育活動を理解するために、領域分離のイデオロギーを鍵概念として捉えた。まずB・ウェルターによって提唱された19世紀半ばの「真の女性らしさ」概念には、人種と階級のバイアスが存在することを指摘した。黒人である解放民女性は「真の女性らしさ」を身に呈する存在とみなされておらず、また救助・教育に携わった北部白人女性の間では、領域分離の言説と実態との間に矛盾・混乱が生じていた。領域分離の概念は複雑に構築されたイデオロギーであり、1860年代の女性の生活や社会活動に多大な影響を与えた規範であることが明らかとなった。 『歴史評論』掲載論文では、解放民関連事業の柱となる初期の解放民教育の実験的な性格に着目し、アボリショニストによる教育活動を検証した。教育「実験」の主な特徴として、自由労働者育成、学習意欲の証明、文明化・市民化があげられる。解放民教育実験は奴隷解放宣言の発布以前からアボリショニストが奴隷解放を現実化し、その正当性を証明する一つの舞台であった。教育内容には北部中産階級白人の価値観が反映されており、教育や観察の対象である解放民の「他者形成」をはかる一面もみられた。
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