2008 Fiscal Year Annual Research Report
就学義務制度の手続き規定の形成過程-戦後教育改革期における政令化モデルの分析-
Project/Area Number |
08J05628
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
雪丸 武彦 Kyushu University, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 就学義務制度 / 就学事務 / 教育を受ける権利 |
Research Abstract |
今年度は、戦後の就学義務制度の手続き規定形成前後の地方自治体の就学義務制度の運用実態について明らかにすることを目的とした。このために、就学義務制度を規定する学校教育法及び同法施行規則の制定前後の法制比較を行い、地方自治体の行動を律するマクロな枠組みの変化についてまずは明らかにした。この変化を明らかにするために法制の成立過程に関連する書籍・雑誌記事を収集し、また国立国会図書館、同憲政資料室においても史・資料収集にあたった。これにより、戦後の就学義務制度が、国民学校令をはじめとした戦前の教育法令と同様の枠組みを持ちつつも、政府間関係の変化に伴う都道府県の市町村に対する教育行政のサポートセクターとしての変化、保護者の就学義務の内容変化(学校の選択の裁量)という2つの変化を有していたことを明らかにした。この成果は論文としてまとめた(『飛梅論集』第9号、2009年)。 この変化を踏まえ、地方自治体の就学義務制度の運用実態を明らかにするために、福岡県、福岡市、鹿児島県、熊本県の各自治体の図書館に赴き、自治体内部の就学をめぐる議論や教育行政の就学事務の動向、子ども・保護者、社会の就学に対する見方に注目し、地方自治体の議会議事録、地方新聞資料、教育行政史料、地方の名士の出版物等の収集を行った。この結果、戦後の就学義務制度の法制の2つの変化に対し、都道府県は財政的余裕のなさから市町村へのサポートセクターとしては対応できていないこと、そして保護者の学校選択の裁量の規定がある一方で、地方自治体はそれに対する対応は行っていないこと、また新制中学校の設置に関する雑誌・新聞記事からは就学の義務の見解が強く示され、権利に対する思想は弱いこと、そして戦後の就学義務制度の規定では変化し得ない行動様式が地方に存在することが判明した。この成果は来年度日本教育行政学会、日本教育制度学会において発表する予定である。
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