2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06045
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大澤 泉 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国衙 / 在庁官人 / 税所 / 正税 / 守護 / 在庁名 / 目代 / 知行国制 |
Research Abstract |
本研究は、中世国衙を国家と地方双方の視点から国衙を検討することによって、衰退したと考えられている中世の国衙の変遷を多面的に捉え直すことを目的としている。本年はまず、国衙を中心とする国家による基本的な地域支配構造が、鎌倉期においては朝廷と幕府両者の関係の中で、いかなる展開を見せたかという点について検討を加えた。その結果、現地調査の結果もふまえ、以下の二点について、確認することができた。 (1)鎌倉後期の常陸国衙では、国衙一円支配地を超える地域に対しても、有力在庁官人等による正税賦課等を行っていたと考えられ、郡・国レベルの国衙機能は継続していたと考えられる。他方、在庁名や府中等「国衙一円支配地」については、幕府や公家等上部権力を背景とする在庁官人の自立的な紐帯が形成されており、「国衙一円進止地」は在庁官人よる相互保証体制の中で維持されていたと考えられた。よって鎌倉期における常陸国の在庁官人制および国衙は、国衙正税地に対する国衙機能と、正税官物の分配・在庁名等「国衙一円支配地」の経営の両方に経済基盤を持っており、幕府によっても保証されているものであったことを指摘した。〔「常陸国在庁官人による国衙機能の維持と保証」(『日本史攷究』32号2008年11月)にて執筆〕 (2)若狭国において、他の在庁給や他の国衙構成員給を含む名は、鎌倉最末期においても在庁官人のもとにあった。また守護と在庁の対立は鎌倉末期であり、それまでは税所代も国衙機構の一部として、公家による知行国制下で国務を行っていたことを確認し、田所・文所等を掌握し、守護・得宗を背景とする税所代と、国衙一円支配地を基盤とし公家の代宮である目代の判を重視する在庁との間に対立があったことを指摘した。 以上のような検討によって、先行研究においては、在庁官人制及び国衙は、鎌倉期になると衰退する傾向にあることが指摘されていたが、幕府や朝廷の両者を背景として、自律的な展開を遂げていた面もあったことを明らかにすることができた。
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