2008 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ水禽類はトリインフルエンザウイルス感染に対し無症状でいられるのか
Project/Area Number |
08J06185
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 真世 Osaka University, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トリインフルエンザウイルス / アヒル / ニワトリ / 細胞死 / ヘマグルチニン |
Research Abstract |
アヒル(水禽類)及びニワトリ(家禽類)各線維芽細胞に対する鳥インフルエンザウイルス(Flu)A/duck/HK/342/78(H5N2)感染実験時、ニワトリ細胞でのみ進行性の細胞死が生じた。宿主間の細胞死の違いに関与する因子を特定すべく細胞死シグナル経路に焦点をあてた。その結果、1.進行性の細胞死はアポトーシスに起因すること、2.カスパーゼ依存性・非依存性の両経路が関与していること、3.ミトコンドリアの膜電位が著しく消失していることが確認された。以上のことよりニワトリ細胞ではFlu感染時ミトコンドリアが機能不全に陥ることにより進行性の細胞死が誘導されると考察された。ミトコンドリアはエネルギー産生を含め細胞生存の中心的器官であり、ニワトリとアヒル細胞間におけるFlu感染時のミトコンドリアシグナル応答の違いは細胞死を左右する重要な1因子と考えられた。 一方病原性に関与するウイルス因子の同定では、アヒル・ニワトリ各卵で継代したウイルスの表現型比較を行ったが有意な差は認められなかった。そこでH5N2感染時軽度の細胞死のみを示すアヒル細胞に高病原性FluであるA/crow/Kyoto/53/04(H5N1)を感染させると進行性の細胞死を示すことに注目した。リバースジェネティクス法を用い組換えウイルスを作成することでH5N1のどのウイルス因子が進行性細胞死に関与するのかを検討した。H5N1の膜蛋白質ヘマグルチニン(HA)をH5N2に組み込んだウイルスによりアヒル細胞で進行性の細胞死を示したことから、H5N1のHA遺伝子が著しい細胞死を誘導する1因子であることが明らかとなった。
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