2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本農業における農業調整問題:発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
08J06536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 大輔 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 長期経済統計 / 農業保護政策 / 米政策 / 生産調整 / 農地流動化 / 取引費用 / 国際食料需給 / 水問題 |
Research Abstract |
本研究の目的は、経済の国際化が進む中で国際競争力のある農業を再構築するために、日本農業において市場の調整メカニズムが機能不全に陥っている原因を国民経済的視点から解明することである。本研究の具体的な課題と今年度における研究実施状況は以下のとおりである。 課題1:長期経済統計に基づく日本農業の動学的調整過程の検討1963年から2003年までの日本農業におけるマクロレベルでの労働投入量を推計するための方法を提示し、また日本農業における労働生産性の展開過程について論じた。 課題2:先進国段階における農業保護の内生的な発生メカニズムの解明WTO農業協定を締結した1995年以降における日本の米政策についての定量的評価を行った。この結果、現行の生産調整を中心とした米政策が消費者と国家財政に約1兆円以上の負担をかけている一方で、その半分ほどしか農家に移転されておらず、残りの半分は経済的損失として失われているという分析結果が得られ、現行の米政策の非効率性が浮き彫りにされた。 課題3:農地貸借の取引費用が農地流動化に与える影響農地転用期待を含む農地に関する取引費用が農地流動化をどれだけ阻害しているかを部分均衡モデルの応用によって考察し、農地のゾーニングや集落機能の活性化などが農地流動化を促進する効果を持つことなどを解明した。 課題4:諸外国における農業政策の研究近年の国際的な課題となっている国際食料需給の現状と環境問題について論じた。この中では、水資源の枯渇が将来における国際的な食料安全保障にとっての脅威となりうることを説明し、その解決のためには水利用の効率性を高めること、農業用水に対する投資を促進することなどが重要であることを主張した。
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