2009 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板検出器ECCを用いた低エネルギーニュートリノ反応の詳細解析
Project/Area Number |
08J07061
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福田 努 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(DC2) (10444390)
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Keywords | ニュートリノ / 原子核乾板 |
Research Abstract |
2005年,06年,07年に米Fermi-Labにて数100MeV-数GeVの低エネルギー領域のニュートリノビームを照射した原子核乾板検出器ECCには今年度から本格的に始まるT2K実験やMINOS実験等のニュートリノ混合角精密測定実験に欠かせないニュートリノ反応自身の詳細データを提供できる反応が蓄積されている。本研究は、原子核乾板検出器の最大の特徴であるサブミクロンの位置分解能を保持したまま、大統計かつノンバイアスな反応解析を実現することを最終目標としている。2009年度行った研究でS-UTSを用いたシステマティックなデータ取りが行えるよう環境整備が整った。その後、取得したデータ中のノイズを除去し、データセットを物理解析に耐えるクォリティまで向上させる手法の開発を行ってきた。本年度はこの点において大きな成果が上がった。本年度行った研究ではニュートリノ反応からの荷電粒子の飛跡とノイズである環境放射線起因の膨大な量の低エネルギー電子の飛跡、フォグと呼ばれるランダムなノイズのチャンスコインシデンスによる偽飛跡の特徴の違いに着目し、具体的には2枚のOPERA-filmに直線を仮定して、その直線からのズレの大きさと4層の乳剤層での飛跡の濃さの情報を駆使してlikelihood関数を定義した。ニュートリノ反応からの荷電粒子は低エネルギー電子等に比べて直線性が極めて高い。また飛跡認識のアルゴリズムから直線性の高い飛跡ほど濃さが大きくなることからこれらの情報を用いることでS/Nを向上させることが可能である。原子核乾板解析の歴史は100年と極めて古いが、このような解析手法は初めての提案であり極めて有用な汎用的解析手法を提案することができた。この手法によりデータセット中の検出効率を数%下げるだけでノイズをさらに1/10にすることができた。現在解析を行ったν_μCC反応からの荷電粒子多重度に関する論文を投稿し、審査中である。このように本年は研究計画で構想していた準備が整い、本格的に物理解析が始まった。4つ上げた研究目標のうち、1番目の「低エネルギーν_μ反応からの1次生成粒子放出角分布測定」に関しては論文を投稿した。2-4番目の物理解析である「低エネルギーν_μCC反応における1π+生成事象の反応断面積測定」、「低エネルギーν_μNC反応における1π0生成事象の反応断面積測定」、「低エネルギーν_eCC反応の反応断面積測定」は始まったばかりであるが、解析準備は整っており今後研究が進むであろう。
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Research Products
(3 results)