Research Abstract |
本研究における2つの根幹のうち,アンモナイト古生物地理の解明については,日本におけるジュラ紀前期アンモナイト群集の把握と,チベット・チャンタンブロック産出のアンモナイト群集の把握を行った.前者については,豊浦層群(山口県)におけるアンモナイト生層序の再検討に関する最終的な野外踏査を行った.その結果,日本における同時代の根幹となるアンモナイト生層序区分を新たに構築した.また,その国際対比に関しては,海外の様々な研究者達と議論を行い,従来とは異なる対比結果を導き出した.以上の内容について,投稿論文を執筆中である.さらに,来馬層群(富山県)において野外踏査を行い,これまで示されていないアンモナイト化石の産出層準を把握した.また,既知のタクサに加え,Harpophylloceras属などといった新たな構成要素を発見した.これは,日本におけるPliensbachian前期のアンモナイト群集の古生物地理学的位置づけを明らかにする上で重要な発見であるといえる.一方,後者については,中国地質大学北京校に赴き,収蔵されている標本の観察と,今後の研究の打ち合わせを行った.これまでに記載された標本の内容が把握でき,分類学的検討などに関する問題点についても明らかにすることができた.また,来年度のチベット調査についての目処を立てることができた. もうひとつの根幹である海洋無酸素事変(OAE)の解明については,分析用のサンプルを採集した.また,豊浦層群のアンモナイト群集の多様性変動について検討したところ,OAEと年代上一致する層準において,アンモナイト群集の多様性の低下が見られることがわかった.これは,ヨーロッパにおいて見られるOAEに起因するアンモナイトの絶滅に対比されると考えられ,東アジア地域におけるOAEの影響を示唆する.この内容について,国際地質学会議(ノルウェー)において発表を行った.
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