2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジュラ紀前期の古海洋環境の変遷-海洋無酸素事変の比較研究に向けて
Project/Area Number |
08J07120
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 健太郎 Niigata University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 古海洋 / ジュラ紀前期 / 海洋無酸素事変 / アンモナイト / 古生物地理 |
Research Abstract |
本研究は,ジュラ紀古世のアンモナイト古生物地理解明と,ジュラ紀古世Toarcian前期の海洋無酸素事変(OAE)の東アジア地域における影響についての解明をその根幹としている. 前者については,来馬層群(富山県)より採集された化石標本の詳細な同定をスイス・ジュネーブにおいてジュネーブ自然史博物館のC.Meister博士と共同で行い,7属13種を確認した,その中には,ロシアや地中海地域の固有種といったその地域以外からの報告例のない種が含まれており,古生物地理学的に重要である.これらの内容については,共著論文を執筆中である.また,豊浦層群より産出する東アジアに固有の種の計測分類学的検討を行い,東アジア固有種の系統上の位置づけや関係性について明らかにした.その上で日本の群集の変遷史の解明を試みた.その結果,日本の群集は,ジュラ紀Pliensbachianの最末期においてボレアル要素(北方系の種)が卓越する群集からテチス要素(南方系の種)が卓越する群集へと変遷することが新たにわかった.これらの変遷は,当時の古海洋環境(海流系など)の変化を反映していると考えられるため,東アジア地域における古海洋環境を議論する上で重要な意義をもつと考える. 一方,後者については地球化学的解析を行った.具体的には,豊浦層群より採集した堆積物中の希土類元素濃度を測定し,還元環境を反映するCe異常が見られないかを検討した.その結果,この堆積物中において著しいCe異常は見られないことがわかった.これは,テチス海東部~パンサラッサ西部(現在の東アジア地域)におけるToarcianのOAEの強度が弱かったことを示唆している可能性がある.東アジア地域においてToarcianのOAEの地球化学的分析のデータはほとんど存在しなかったため,このイベントの汎世界性を議論するうえで重要な貢献であると考える.
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