2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小宮 あすか Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 後悔 / 文化 / 意思決定 / 個人的-対人的状況 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は、認知心理学における後悔研究に文化心理学的手法を新たに導入し、後悔の文化的・社会的側面を検討することによって、後悔が、人々が当該の社会へ道具的・心理的に適応することを促進する機能を持つ可能性を実証的に検討することにある。本年度はまず、昨年度に引き続き、心理的適応の観点から、日米の後悔の文化的な特徴に応じて人々が自分の行動を変化させるかどうかを検討した(研究1)。また、道具的な適応の観点から、対人的な状況における後悔がどのように適応を促進するのか、2つの研究を通じて検討した(研究2)。研究1について、今年度は文化・状況によらず、後悔の行動変容機能が見られるかどうか、日米で行動実験を行い検討した。具体的には、先行研究(e.g., Meller, Schwarts, & Ritov, 1999)に基づいた繰り返しのルーレットゲームを用いて、その結果が友人の損得を決定する状況(対人的状況)と自分の損得を決定する状況(個人的状況)を実験室に作成し、ルーレットゲームで負けたときの後悔の強さおよびルーレットの選択行動を検討した。この結果、日本人とアメリカ人の後悔の強さのパターンはそれぞれの状況で異なっていたが、強い後悔を避けようとする選択のパターン自体は状況を通じて一貫していた。これらの結果は、状況・文化を通じて後悔が人々の行動変容を促進する機能を保持していることを示している。しかし、道具的な適応の観点から見ると、対人的な状況で後悔をし、行動を変容させることは必ずしも得策ではない。対人的な状況における後悔は他者の損得に基づくため、自分が行動を変容させても、他者の利益は確保される一方で、自分の利益は確保されないからである。この点について研究2では、より関係性の維持に直接関連すると思われる信頼感に注目し、対人的な後悔が信頼を回復させる機能を持つかどうかについて検討し、仮説を支持する結果を得た。
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