2008 Fiscal Year Annual Research Report
遠方銀河団の多波長観測による宇宙の質量集積史と星形成史の解明
Project/Area Number |
08J08678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 佑世 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銀河進化 / 星形成 / 遠方銀河団 / あかり衛星 / 環境効果 |
Research Abstract |
本年度は、あかり衛星を用いたRXJ1716銀河団(赤方偏移0.81)の解析を中心に研究を進めた。あかり衛星は赤外線の広い観測視野をもつので、銀河団中心部分だけでなく、銀河団周囲に広がる大規模構造に沿って、ダストを伴う星形成活動を行っている銀河を捉えることができる。解析の結果、中間赤外線で検出される銀河の多くは、銀河団中心領域を避けて分布しており、その外側、なかでも銀河群やフィラメント程度の「中間的な」密度環境を好んで存在していることが分かった。これらの環境は、銀河の色が変化を起こす(青い銀河が赤い銀河へと変化を始める)環境でもあるので、銀河進化を考えるうえで非常に重要な環境であることを示唆する。また、中間赤外線で検出された銀河のなかには、明らかに銀河同士が相互作用しているものも存在し、銀河群程度の環境における銀河同士の相互作用や銀河合体のようなプロセスが、現在の宇宙に見られる銀河の性質と環境の関係を作り上げてきた一つの重要なプロセスである可能性を示した。この研究結果は、すでに英国の論文誌に掲載されている(Koyama et al.2008,MNRAS,391,1758)。この結果を現在、さらに発展させようとしている。具体的には、このRXJ1716銀河団を、星形成活動の有用な指標とされるHα輝線で探査することである。一般に、これほど遠方の宇宙を観測する場合、Hα輝線は近赤外線域へと移動してしまい、大規模なHα輝線探査を行うことは難しい。しかし、この銀河団の場合はHα輝線にちょうど対応した狭帯域フィルターがすばる望遠鏡の近赤外線観測装置MOIRCSに搭載されており、銀河団中心から外側にいたるまで、広く大規模なHα輝線探査を行うことができる。データはすでに取得しており、現在はその解析を進めている。
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Research Products
(13 results)